マコト

遠いところのマコトのレビュー・感想・評価

遠いところ(2022年製作の映画)
4.1
 いままで沖縄を描く作品というのは、ほとんどが「南国」「スローライフ」「楽園」「人情」などを前面に出してきていたけど、実際に沖縄で生まれ育った者としてはどこか嘘くささを感じてきました。そして、その楽天的なイメージに苛立つこともしばしばあります。
 本作は、そういった夢想のような沖縄ではなく、いままさに存在する沖縄のリアルが描かれていて、やっと僕らは地に降り立てる期待が持てます。
 ファーストシーンは、画面、演技、音、状況、リアリティがとても素晴らしく、この作品は傑作ではと身を乗り出しました。

 だがそこから次第に、画面はドキュメンタリータッチが薄れていき映画的な定石のようなものになっていって、ドラマチックではあるのだけれど、本作のテーマとは少しずれた表現になっているような気がして残念に思います。

 僕としては本作はケン・ローチ監督の作品のような、乾いたドキュメンタリータッチを徹底することで、主人公に降りかかる苦難や、生なしいセリフが生きてきて、よりテーマをストレートに語ることができたのではないかと思います。また、それをすることにより後半の主人公の海で見るものの衝撃も増すと感じました。
 
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