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遠いところのtemppのレビュー・感想・評価

遠いところ(2022年製作の映画)
3.3
ざりざりしたとてもドライな作品。テーマが貧困なのに、主人公のアオイを可哀想に描いていないところが余計に客観的な視点を持たせている稀有な映画。

大抵の社会問題系の映画は登場人物を可哀想に描き感情的に社会が悪いという印象に持っていく映画が多いなか、この映画は貧困自体にフォーカスするのではなくアオイ自身に淡々とフォーカスし、ありがちな一般論の入り込む予知をあえて排除してる気がする。
客観的には劣悪な状態の中で、アオイが感じているのは多分自分が可哀想とかこの生活から抜け出したいという段階ではなくて、金がない、なんだろうなと思う。生活するのにお金が必要という現実の中、それしか見えないくなっている。それこそ貧困による視野狭窄であるし、時々現れる手を差し伸べる人たちが、そもそも正しいかどうかとか自分を最終的に救うかどうかとか考える余裕もなく、目の前の金がないということから目が離せないという構造をあらあしている、気がする。
そうするとアオイは純粋に自分にできる方策をとっているだけで、それがどん詰まりであることも本人は認識する余裕がない。そして気がつけばラストシーンにいるわけで。
淡々と日常が描かれるのですごく盛り上がったりはしないけれど、シーン毎が日常なんだろうなっていう不思議な感覚の映画でした。

福祉アクセスとか時々話題にあがるけど、これって凄い根深い問題なんだなって思った。
映像はとても美しいです。
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