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遠いところのshironのレビュー・感想・評価

遠いところ(2022年製作の映画)
5.0
さすがは大島渚賞を受賞する作品、骨太です。
母性本能は1ミリも無い私ですが、生命力に圧倒されました。
静かなる問題提起が、深く心に刻まれます。

映画の神様に祝福されたとしか思えない、奇跡のようなシーンの数々。
記念上映会の併映に『少年』が選ばれたのにも納得。
上映後のトークショーでは「たまたま撮れた」とおっしゃっていましたが
順撮りで役者の心の動きに負担が無かったからこそ撮れたのだと思うし
その関係性を作り、環境を整えた、工藤将亮監督を始めとするスタッフ皆さんのチームワークも素晴らしいと感じました。
そして何より、実際に沖縄で取材を重ねていく上で築きあげた、現地の人たちとの信頼関係。
更にそれを映画に落とし込むにあたってのスタンスやジャッジに一本筋が通っていて痺れました。
ぜひ知ってもらいたいので少し紹介します。
役者の花瀬琴音さんがリアルで、沖縄の人にしか見えなくて素晴らしいのですが
当初はできれば役の当事者に近いアマチュアの人を起用したくて、沖縄でもオーディションをしていたそうです。
1000人以上と会って、役にピッタリの沖縄の人も見つかっていたけど、
若いアマチュアの人にこれを背負わせるわけにはいかないと思いなおして、プロの役者さんの花瀬さんに決めたそうです。
ドキュメンタリーでも感じることなのですが、映画が終わってもその人の人生は続くので、素晴らしいジャッジだと思いました。

次回作も追い続けたい。
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