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大きな鳥と小さな鳥のニューランドのレビュー・感想・評価

大きな鳥と小さな鳥(1966年製作の映画)
3.6
✔『大きな鳥と小さな鳥』(3.6p)『シェイディー·グローブ』(3.7p)▶️▶️

 PFFの大きな柱は新人の発掘·育成と、大作家レトロスペクティブだが、段々後者がショボくなってる中、今年は生誕100年のパゾリーニと本年急逝の青山の特集が行われた。結構な盛況(会場が工事の関係で小さくもなり)だったらしいが、個人的には極終盤2~3番組ずつ観ただけだが、会場などを移しての、個人的一旦打止めに、ある程度の同時代人として感慨は持つ。特に最後に観た作品は、共に今更ながら規格外の才気·才能に、心が洗われる気がした。
 『~鳥』。これは30数年前ノースーパーで観ただけの作だが、それでもかなり面白かった記憶がある。今回見直す気になったのは、それと、パゾリーニ後期を持上げない山田宏一さんや、四方田さんぐるみで数年パゾリーニに夢中の知人が真っ先に、面白いと言ってた作品だからだ。
 実際面白い。トトとダボリのトンチンカン親子が、近づいて来た左翼カラスを連れ、村の祭礼·修道僧行·貧しき人々·直接目的の左翼理論家を訪ね歩き、納得·収束の結論等は常に行き当たれず、終わることがないだろう旅を更に続け、喋り続け出した烏は捉え食って、歩を進めてく。実際早回しが騒々しく猛々しくスビーディに何回も併用されても、その技法に喰われなくて、逆にパワー·行動力を見せつけてく父子キャラで、ここでは喋り·信仰·論理より、その本質を実体化する、左右に拡がり伸びて止まらない、走りまくりが魅力·本質となっている。烏の言葉を走り歩く軌跡と理解して以来、聖フランチェスコによる信仰の尊さ·貧しさの無力·借金にまで及ぶ左翼合理論理はそれぞれに価値あるも、それを促す行動力·エネルギーの何にも基づかない、欲望すら従者となる鮮やか絶対だけが、真に記録記憶され.歩を進めてゆく。右も左も、権力も無産も、本質は同じものが顕してくる。 
 このコメディてしても、スター映画としても、一級のノリノリ、そして誰をも落ち着かせず、浮つかせ続きのタッチ·テーマの、煙に巻きかたの鮮やかさ·捌き方はどうだ。奥行き見えず伸びる道、単純ぶっきら棒の相方対応と向かう相手と周囲巡る光景パンとの切り返し、速く機微に充ち呼応する·人やその足元と烏動き·そのカッティングのチョコマカ才気、あらゆる層を知識層から大衆まで満足させる、稀なる作か。
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 『~グローブ』。ドキッとさせられ続きの音響·音楽、使用媒体2種の優劣差異を気にさせぬ構図·照明(トビ)の力と自信、迷惑なほどのストーカーもどき自己告白おしつけのウブ過ぎ内容、が、駆け抜ける。カメラワークや色調や凝った縦めの構図も見事だ。私は守旧的人間で新しいものは拒否しがちなので、数歳年下の青山を高く評価したことはないが、レンタルビデオでメイン(北九州もの?)以外の作も観るようにはしていた。それは正直、青山の切れ味·現代映画の申し子ぶりには、恐れを成してた部分があっての、怖いもの手放せずの感覚か。幸い作劇に欠陥があったので、先の3部作以外は何かの記憶にリストアップしたことはないが、心には痕が残っていた。『東京~』辺りからウェルメイド、大勢に合わせる奥ゆかしいスタイルになっていたが、いつまた牙を剥くのだろうと気にかかってはいた。
 「彼らが変わったのか、世界が受け入れたのか、いや2人が世界になったのだ」「常に宙に浮いた存在だった(親の期待に応え一流のコース·好きにになった相手もそこを外れず·母の言い方で婿養子を宣言·この結婚しかないと/亡くなった双子の妹を考え常に半端存在の不安·それを意固地反発して·却って追い込まれ·ダメ人間そのものに·ランダム電話の君の声に·妹を確信し歩を変え進めた·冷静になって·はっきり妹ではない君を好きに)。それも今は怖くない」「そんなことを言い、相手を考えず自分勝手すぎる」「いや、応じ直す訳では。しかし、君に動かされ、謝る事だけはしないと、と」
 青山も自身青臭さ、多分に剛力奮迅を楽しみ、爽快な活力·隠れた空恐ろしい天才で、纏めている。位置を尊重し過ぎで余計なまでの律儀さと·自己曝け出しの相手無視の押し付けの共に常識外れ·すっ飛びコメディ感、二重ナレーションや·1日毎の曜日入れリズムから一足飛び1ヶ月後のリズムね文学性、離れられない東京の今や大画面だと粗さしか残らぬSD画面とイメージを共有してくる幼児にあった(いまはもう団地の筈だが?)森を描く35ミリ画面の挿入の併用の却って纏まり。
 突然振られたを我慢ならず、誰構わず迷惑深夜電話しまくりの中に、行き詰まり退職を考えてた男の、心優しいサジェストあり思い直し·ヨリ戻し再アタックのOL。雇い私立探偵調べやハウトゥー本超えて、何時しかストーカー紛いに。が何故か、拒絶から婚約に好転へ。しかし海外栄転のための所帯持ちと、先発彼の、彼女の誠実さに動かされての手紙が外地からくる。電話から交遊始まり彼の恋の生まれと勝手告白·去りの男の方へ想いは、向かい出し、二人の共通イメージの森へ。
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