てっぺい

窓辺にてのてっぺいのレビュー・感想・評価

窓辺にて(2022年製作の映画)
3.5
【稲垣吾郎の映画】
稲垣吾郎をイメージしてあて書きされた脚本。どハマり役すぎてその相乗効果はMAX。“妻の不倫に心が動かない”夫の心の機微に、共感しうる/しえないスレスレのラインが面白い。

◆トリビア
〇脚本は、今泉監督による稲垣吾郎をイメージして書かれたあて書き。稲垣は「監督に心の中を見透かされているようで、ここまで役作りをしなかった役はない」と語った。(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/10/27/kiji/20221027s00041000101000c.html)
〇夫婦の気持ちがぶつかり合うシーンは、稲垣、中村に予告なく長回しで撮影。8分予定が12分の肝入りシーンとなった。(https://contents.atarashiichizu.com/?p=19474)
○カメラが趣味の稲垣吾郎。劇中で登場するカメラは、本人の私物を使用するはずが壊れてしまい、スタッフから借りた。(https://article.auone.jp/detail/1/5/9/100_9_r_20221103_1667459212869653)
〇稲垣吾郎は、カメラを150台所有している。(https://moviewalker.jp/news/article/1109874/p2)
○ 稲垣吾郎と今泉監督は初タッグだが、稲垣は自身が担当する雑誌「anan」の連載「シネマナビ!」で度々作品を取り上げるなど、かねてから今泉監督作品のファンだった。(https://www.cinematoday.jp/news/N0133167)
○稲垣吾郎は雑誌の連載や、映画を語るテレビ番組、映画祭のレッドカーペット取材など映画の仕事が多いが、本音は「映画は出るものでありたい」。(https://eiga.com/amp/news/20221101/19/)
○中村ゆりは浮気がバレる長回しのシーンで気持ちが高ぶり、自身で予定も想定もしていなかった涙が出た。(https://w-online.jp/archives/12860/)
○中村ゆりは恋愛観について聞かれ「好きって歯ブラシもタオルも共有できるくらい理屈じゃないもの」と答えたが誰にも共感されなかった。(https://spice.eplus.jp/articles/309245/amp)
〇ババ抜きをしながら会話をするシーンで「変な状態に陥っていた」という玉城は笑いが止まらなくなり、周囲を困惑させた。(https://news.infoseek.co.jp/article/modelpress_3399764/)
○今泉監督が30代の頃、妻が浮気したとしたら自分が怒れるか、と思った事が本作が生まれたきっかけ。(https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1355832)
○ 本作は第35回東京国際映画祭で観客賞を受賞した。(https://hochi.news/articles/20221102-OHT1T51178.html)
〇2018年の東京国際映画祭で『半世界』(稲垣吾郎主演)と『愛がなんだ』(今泉監督作品)が同じコンペティション部門にノミネートされた出会いから、この作品に繋がった。(https://madobenite.com/#)

◆概要
第35回東京国際映画祭コンペティション部門観客賞受賞作品。
【監督・脚本】
「愛がなんだ」今泉力哉
【出演】
稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、佐々木詩音
【公開】2022年11月4日
【上映時間】143分
【主題歌】スカート「窓辺にて」

◆ストーリー
フリーライターの市川茂巳は、編集者である妻・紗衣が担当している人気若手作家と浮気していることに気づいていたが、それを妻に言い出すことができずにいた。その一方で、茂巳は浮気を知った時に自身の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。そんなある日、文学賞の授賞式で高校生作家・久保留亜に出会った市川は、彼女の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれ、その小説にモデルがいるのなら会わせてほしいと話す。


◆以下ネタバレ


◆ハマり役
稲垣吾郎の当てがきで書かれた脚本。“期待とか信頼とかされない方がいい”“ショックじゃなかった事がショック”セリフの一つ一つや、茂巳の佇まいが稲垣吾郎のイメージそのもの。妻の不倫にも感情が動かない、どこか飄々として、感情が見えない彼の真にどハマりな役だった。全編を通じて、茂巳でありもはや稲垣吾郎が迷い続けるような印象も。それが講じてか、例の長回しのシーンでは、答えが見つからないまま言葉に迷う茂巳が、次に何を言い出すのか分からないドキドキ感が頂点。ぐっと引き込まれる感覚だった。

◆手放す
「ラ・フランス」の“手に入れたものを簡単に手放してしまう”事に興味を持った茂巳。そのモデルとなった男たちに心が向いていく。留亜の彼氏は留亜を手放し、叔父は俗世を捨てる。彼らとの出会いを通じて、まるで流浪するように自分自身と向き合えていなかった茂巳がたどり着いた結論はやはり、夫婦の関係を手放す事。“手放す”事が一つのテーマになっていた。

◆解釈
ラストでパフェを注文する茂巳。まるで“君はこの意味が分かるか”と製作陣から問いかけられているような挑戦的なエンド笑。パフェは留亜が“いつも後悔する”と語った好物。「ラ・フランス」のモデルでもあった留亜の元カレが、破局を後悔し復縁を求めるその純真無垢な姿に少し感化される茂巳。“手放す”選択をした茂巳が、“光のリング”が光る薬指を眺めながら、“後悔パフェ”を注文した次に向かう先はきっと…

◆窓辺にて
冒頭とラストの喫茶店も、茂巳が朝日で起こされたラブホテルも、ゆきのがマサの浮気を相談しにきたのも、全て窓辺。紗衣の母親を写したアルバムもまるで窓辺のよう。“暗い話に対する穏やかさの演出”と今泉監督はその意味を語っているけど(https://www.cinematoday.jp/news/N0133276)、映画全体がキラキラして穏やかで、中身こそ不倫の話ながらどこか陽だまりに包まれるようなあたたかな映画だった。

◆関連作品
〇「愛がなんだ」(’18)
今泉監督の代表作で、本作同様TIFF(東京国際映画祭)出品作品。ラストがインパクトあり。プライムビデオ配信中。
〇「半世界」(’18)
稲垣吾郎の代表作。TIFFコンペティション部門観客賞受賞作品作品。稲垣吾郎が炭火焼職人を演じる、こちらもあて書きのオリジナル脚本。プライムビデオ配信中。

◆評価(2022年11月4日時点)
Filmarks:★×4.0
Yahoo!映画:★×3.9
映画.com:★×3.6

引用元
https://eiga.com/amp/movie/97301/
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