イエローオーシャン

窓辺にてのイエローオーシャンのレビュー・感想・評価

窓辺にて(2022年製作の映画)
4.4
「嘘が下手っていうのはひとつの魅力だと思うんです。」

妻の不倫に気付きながらも全く怒りが湧かない茂巳。自分は妻のことを愛していたのか、なぜ自分はショックを受けていないのか、そのことにショックを受ける。抱えてる悩みの大きさに比べて、茂巳はいたって静かな人間で、そのチグハグ感が面白い。

映画を観ている時は、「夫婦」ってなんだろうとか「愛」とかについて考えてたけれど、観終わって「好き」とか「愛してる」の正解なんて無いのだから、それでいいじゃないと思ったし、多分私が考えているよりこれらのものは光と同じくらい影があるのだと思う。

今泉監督の作品なので、映像がとても柔らかくて優しくて、セリフの一つ一つが美しくて「パフェ」とか「ラフランス」とか「焼肉」とか今まで普通に見てきたものが意味のあるものに思えてくるような、不思議な暖かさがある。

元小説家で今はフリーライターとして活動しているにも関わらず、妻の不倫にショックを受けない、作り手の側なのに感情が動かない、だけれど彼は確かに久保瑠亜の小説を面白いと思ったし、夫の浮気に気づいた知り合いの相談には乗るし、妻にも優しい。

重要なシーンであればあるほど、長回しで音楽もない、窓辺にいる時の陽の光が入ってきて周りはとても静かで、どこか想いに耽ってしまってという感覚が続くような、そんな作品。