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窓辺にてのknitamiのネタバレレビュー・内容・結末

窓辺にて(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

こんなに穏やかな修羅場、浮気がバレた方が傷ついている修羅場、映画で見たことない。現実みたい。
こういう夫婦が本当にいて、「私を好きだったことある?」なんて、辛すぎる問いかけの現場を目撃してしまったような。

どの二人組の会話もとても楽しい。だらだら自然にしゃべってるだけに見えるのに、飽きない。それがすごく映画っぽいって思う。
印象に残る場面がたくさんある。
床に落ちたマスカットを拾った場面。これ、机に置いてもいいものか、どうしよう…と一瞬迷ってから机にそっと置く手の動き。
向かい合ってババ抜きを始める場面。じゃんけんする時の一瞬の間。
有坂家での、三人の場面。「浮気なんて信じられない」って、しれっと話す夫の顔をちろっと盗み見る妻の表情。あ、浮気に気付いてるんだって一発で分かる。
寝落ちした妻の背中に中途半端に置かれたブランケット。起きた妻は、暖かいとか優しいとか感じてなくて、あ、なんか乗ってるって虚無の表情でそれをとって膝にかける。
全部どうってことない動作なのに、そこから気持ちが見えるから、心に残る。小説を読んでるみたい。
映画を見終えてみると、「ラ・フランス」で描かれた男はまるで市川みたいだと思える。手に入れるけど、すぐに手放す男。久保が、まだ出会う前に市川を描いた小説。
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