ねこねここねこ

窓辺にてのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

窓辺にて(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

ライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は17歳の高校生作家久保留亜(玉城ティナ)の授賞式での質問が縁でプライベートで会うようになる。
そして留亜の小説のモデルの1人である彼氏優ニ(倉悠貴)に会わせてもらうが、留亜とはサシで会うなときつく言われたり、かと思えば悩みがあるからバイクの後ろに茂巳を乗せてひとっ走りしてと留亜に頼まれると快く引き受けたり。
実はこの映画の中でこの優二という彼氏の存在が一番単純明快で気持ちいい存在なのかもしれない。だから留亜もこの彼氏が大好きなのだろう。

茂巳は過去に一作だけ小説を書いて、もう小説は書かないと筆を折ってしまった過去がある。
その小説にはいなくなった猫の「横綱」のこと、その猫を探しに行くと言ったまま居なくなってしまった元カノのことが描かれていた。
そして妻の紗衣(中村ゆり)はそのことを気にしているが、一方で自分の担当作家の荒川円と不倫をしている。小説を出せば売れる人気作家の荒川は、自分の小説が書きたいものではなく、面白くもないと行き詰まっている。そんな荒川をなんとか支えようとしているのかもしれないが、それは荒川と一緒に寝ることじゃないと茂巳から言われる。
実は茂巳は紗衣の浮気に以前から気づいていた。しかし妻の浮気より、それを知ってもなんの怒りも湧かない自分にショックを受け悩んでいた。

そして離婚を決意するのだが、この辺りの描写はとてもいいなと思う。
荒川の新作についてのSNSをチェックする妻のブラウスにボタンを着けするという裁縫🧵🪡している吾郎ちゃん。こんな姿を見るのはなんかほのぼのしていてかなりいい感じ。
こんなほんわかした雰囲気から、話の流れで離婚まで進んでしまう、その流れがあまりにも自然。
「SNSなんてそんなに見ない方がいいんじゃない?」という台詞。これそのまま吾郎ちゃんは実行してそうで、なんかクスッと笑える。
紗衣は自分と荒川の関係を茂巳がずっと前から知っていて黙っていたことに驚きショックを受けるが、この辺の紗衣の気持ちはなんとなーくわからないでもないけど、こういう女は嫌いだ。
質問に質問で返してみたり、自分だけが苦しんでいると思い込んでいる。そして荒川に寄り添う方法も間違ってるし、荒川の気持ちを知りながらそれを利用しているくせに、と思ってしまう。ちなみにこの荒川を演じてる役者さん、驚くほど棒読み😱 他の役者いなかったのか?と思ってしまうのだが、他の映画にも出てるんだね💦
吾郎ちゃんの演技が自然で上手いだけに(吾郎ちゃんってこんなに上手かったっけって改めて驚いたけど、でも確かに「十三人の刺客」の時も上手かったな)なんか荒川の台詞が棒読み過ぎて個人的には違和感しかない感じなんだけど。

とにかく、夫婦が別れる時、穏やかな流れのままというか、強い夫婦喧嘩にもなっていないのって悲しいなと思う。激しく罵るような嫉妬も情熱もそこにはないのだ。そういう意味では紗衣は可哀想なんだろうけど、不倫しちゃいかんよね。不倫しちゃったらその時点でアウトなわけよ。

とは言え茂巳の友人の有村は何かの選手?足を怪我してリハビリ中みたいだけど、こいつも不倫してる。相手の女性からもうこんなことやめよう、「MAX焼肉まで」(←この台詞はなんかすごい説得力ある)と言われていたのに、次会ってる時焼肉食べてるじゃーんと思って観てたらやっぱりその後ホテルじゃないか💢こっちもクズ男なんだけど、そしてこっちの妻(志田未来)も浮気に気づいているのだが、こちらは妻が怒りやショックはあるけれど、なんだかんだ言っても子供もいるし、有村のことが好きだから、戻って来てくれたら許すという感じ。けどまぁこんなクズ男はどうせまた浮気するだろうなぁ。浮気するんだけど有村もやはり妻のことが大切だし好きなのだろう。そして妻が浮気したらすごく怒りそう。結局相手に対してそれだけの情熱や感情があるかどうか?

この映画の中には3組の夫婦や恋人が登場する。軸は茂巳と紗衣だが、有村夫婦や留亜と優二。
私は留亜と優二のカップルが1番好きかな。まだ若くて、それゆえ純粋に真っ直ぐに相手に向き合ってる感じがいい。

最後の方で荒川に呼び出されてカフェに会いに行く茂巳。紗衣とのことを小説にほぼ一晩で書いたという荒川は、書くことで彼女が過去になってしまって悲しいという。
自分との時間を書いて欲しい紗衣に対して書かないことが茂巳の愛情だったのではないかと言う荒川。
対峙している茂巳は静かに聞いているのみで、否定も肯定もしない。

また別の日、その荒川の小説が本となり、その本を留亜から読むように渡された優二からも呼び出されてカフェで待っている茂巳。小説の中に出てくる自分がモデルの「妻に浮気されたのに怒らない男」について、サイコパスだのSFだの言う優二。茂巳はまさに微苦笑という感じで聞いている。

いつも呼び出される側の茂巳。でも荒川と対峙している時のカフェの雰囲気、窓辺でもなく全体的に暗く重苦しい雰囲気とは真逆で、優二と会うカフェは窓辺の席で明るく少しレトロでほのぼのしている。

留亜が復縁を望んでいるのではないかと言われ(茂巳にそれを言って欲しかったのだろうね)喜んで電話📱を掛けに行く優二。パフェを2つ頼もうとして、おそらく優二はもう戻って来ずにそのまま留亜に会いに行くだろうと思った茂巳はパフェを1つにしてくださいと注文。
このラストはなんかいいな。
冒頭のカフェシーンや、留亜が「だいたいのパフェはコーヒーに200円足したら食べられるから、これからはコーヒー☕️じゃなくパフェを注文してください」と言う台詞を回収してる感じ。

まぁ全体的には少しダラダラ長い。143分もあるけど、監督の遊び心をもう少し我慢したら120分で収まるはずだし、それでも十分だろう。

吾郎ちゃんは魅力的なイケオジになったね。