ジェイティー

ビーストのジェイティーのネタバレレビュー・内容・結末

ビースト(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

医師のネイトは娘二人と共に亡くなった妻の出身地アフリカへ旅行に出かける、現地の友人マーティンの案内で観光客が足を踏み入れない地帯へドライブするがそこで密猟者たちの魔の手を掻い潜った狂暴なライオンがネイト達に襲い掛かるお話。

「自然界ではただの餌である人間と襲い来る猛獣」これ自体は大昔から存在するプロットですが、名のある役者を据え真面目に作るとどうなるか興味があったので鑑賞。

結果としてきちんと楽しめました。
まず本作の特徴は一つの場面を細かくカットせず長回し風に構成している点です。これは今回のシチュエーションで観ている側も第三者としてそこにいるかのように工夫したこととリアルタイムでライオンが襲ってくる緊張感を味わってもらうためだと解釈しました。
その目論見は少なくとも自分には効果がありました、ライオンさん本当に怖いです。

またこの効果は別の良さも出してまして本題に入る前の場面でさりげなく伏線を張ることができる上にわざわざカットを割って「ここはテストに出るよ」とあからさまに見せつける必要がないのが良いと思います。
しかもこの状況ならありえそう程度の伏線なのでそこもポイントが高いです。

上と関連して登場人物の会話劇ですが、軸がブレないようにこういう場面なら切り出しても良いかもしれないという唐突さを感じさせない箇所が結構多かったと思います。特にライオンさんが襲撃してきた辺り、パニック場面での主人公達の立ち回りはこういうシチュエーションの時にどういう会話が適切だろうかというのがだいぶ考えられているように感じました。この緻密なやりとりがあって初めて登場人物たちが無茶する場面が活きてくるんだなと感心しましたね。

奥さんの存在については個人的にはコンクリートの下に肉体は存在しても魂は生まれた地に存在している、または妻の心と離れてしまったと思っているネイトですがその実彼女はいつもそばにいてくれたのかもしれないと解釈しました。

その他、
・マーティンの命を懸けた最後の一撃で「この炎の中では流石の奴でも生きてはおるまい・・・」と自分の心の中でフラグを立てて楽しんだり
・娘二人も度胸があって無駄に騒がず、きちんと協力していたのがよかったですね、演技もとても上手かったです。
・マーティンを演じたシャールト・コプリーのまともな演技って貴重だな
・エルバ兄貴とライオンさんがよもや文字通り肉弾戦を繰り広げるとは・・・やはりアメリカ映画のクライマックスは殴り合いがないといけませんね。
・若いお兄ちゃん二人が前半退屈で寝たとか言ってましたが、必要最低限の場面しかないのにあれで寝てしまったら映画なんか観れないぞ!と悲しくなった。

言ってしまえばB級かもしれませんけど本当にきちんとしていてあっという間の90分でした。
意外とお勧めです。