こなつ

素晴らしき眺め/奇跡の眺めのこなつのレビュー・感想・評価

3.8
中国映画「少年の君」で、チョウ・ドンユイと共演して一躍有名になったジャクソン・イーの単独主演作。監督は「薬の神じゃない」でデビューしたウェン・ムーイエの長編2作目。

心臓病を患う妹タンタンを連れ深圳に越して来た20歳の青年ハウ(ジャクソン・イー)が、妹の手術代を作るため、買い付けた大量の中古スマホを元手に幾多の障害に阻まれながら仲間たちの力を借り、新形態ビジネスが認められるようになるまでのサクセスストーリー。

舞台になっている深圳は、昔は隣接する香港から境界線を超えただけで一気に大陸感漂う田舎町と言われていたのに、改革開放政策で経済特区に指定されるとみるみる発展したことで有名。超高層ビルが立ち並び今ではすっかり中国屈指の最先端都市だ。電子機器製造で急成長した深圳には最新テクノロジーが集まり「中国のシリコンバレー」とも言われている。そんな深圳ならではの土地柄を反映させた物語に興味深かった。

実話ではないらしいが、監督が深圳をリサーチして色々な話を聞いた上で作りあげていったというストーリーを観ると、青年ハウのような若者が実際にいたのではないか、、そんな若者にチャンスを与えようとする粋な大企業の社長がいたのではないか、そんなことを思わせる。

ハウは、病死した母の代わりに病弱の妹の面倒を必死でみながら、たとえ借金を抱えても投げやりにならずに頑張る青年。時にキツい目をしながらも、妹や友人に優しく接するハウを、ジャクソン・イーが好演。やはり彼は演技が上手だなと思う。

中国の中の深圳という知らない街の雰囲気が味わえた。「今の自分ではない、何者かになれる自分」そういう若者の気持ちが伝わってきて、ラストの奇跡が温かかった。
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