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3人のキリストのkuuのレビュー・感想・評価

3人のキリスト(2017年製作の映画)
3.8
『3人のキリスト』
原題 Three Christs.
製作年 2017年。上映時間109分。

自分がイエス・キリストだと信じる3人の妄想型統合失調症患者と精神科医との交流を描くドラマ。
リチャード・ギアが飾らないで熱演してました。
社会心理学者のミルトン・ロキーチが妄想型統合失調症患者に対して行った心理実験の記録を基にした研究書『イプシランティの3人のキリスト』を題材に、自分がイエス・キリストだと信じる3人の患者と精神科医との交流を描いたドラマ。
リチャード・ギア、ピーター・ディンクレイジら巧みなキャスト陣と、『ブラック・スワン』などを手がけた製作陣によって紡がれるストーリーは深い感動で揺さぶってくるストーリー。

1959年の夏、精神科医アラン・ストーンはミシガン州にあるイプシランティ州立病院で、自分がイエス・キリストだと信じる3人の妄想型統合失調症患者、ジョセフ、クライド、リオンの治療を任される。
3人を同室にし、一緒にセッションを行うことが治療に有効と考えたストーンは、さっそく3人を引き合わせる。最初は反発する3人だったが、やがてそれぞれに少しずつ変化が現れる。。。

今作品のプロローグとエピローグの言葉を見ると心理治療の見解の変節をみることが出来るんかなと思いますが、抜粋して感想始めます。

プロローグ
1950年代、精神病院での典型的な治療法は、前頭葉切除術、インシュリン誘発昏睡、電気ショック療法、抗精神病薬、最小限の心理療法でした。

エピローグ
この研究を発表してから20年後、著者は次のように書いている。私は彼らの神のような妄想を治すことに失敗したが、彼らは私の妄想を治してくれたのだ。
最初の批判にもかかわらず、アメリカ心理学会はこの研究の著者に名誉あるクルト・ルウィン賞を授与した。

今作品は、とてもパワフルで所々コメディタッチで感動的なので、表面上の突飛な状況を忘れてしまうほどでした。
リチャード・ギアがまさしくそれを身体と表情で、そして台詞で表現してたし、しかも飾らないで巧いなぁ。
今作品は、実際の実験に基づいていて、50年代の精神科医は、3人の別々の偏執性統合失調症患者の新しい治療法を見つけることを任される。
彼らは皆、自分こそが本物のイエスキリストで残りの2人は偽者だと思い込んでいる。
治療が進むにつれ、4人は緊密な絆を築き始めるが、一方で精神病院の上層部は、このプログラムを永久に停止し、すべての進歩や人間性の兆候を根絶させると脅す。
今作品は個人的にとても美しく感じ、信じられないほど痛烈なストーリー展開で、登場人物たちが化学反応を起こし、人間関係を構築していく中で、悲しんだり笑ったりすることができる作品だと思います。
特に、3人のキリスト(ウォルトン・ゴギンズ、ピーター・ディンクレイジ、ブラッドリー・ウィットフォード)、実験を進める主任精神科医役のリチャード・ギア、その上司役のスティーブン・ルートとケビン・ポラック、ギアの大学実習生役で、主人公の1人と特に深い絆を持つシャーロット・ホープ(キュート)が見どころかな。
彼らの演技は信じられないほど力強く、特に最後の20分間は、心の琴線に触れる方法を知っているってか泣かされた🥺。
特にジュリアナ・マルギレスが演じる妻は、映画の半ばを過ぎたあたりから突然、飲酒問題を起こしてしまう。
ギアが演じる家族がほとんどの場面で後回しにされるとしても、もう少しの展開があってもよかったんちゃうかとは思う。 
今作品が扱う重いテーマも、心理療法も、好奇心の強い心を知るための新しい形と、電気ショック療法への復帰、薬物で本当の自分を殺すことの間に存在する綱引きを考えれば、もっと面白く掘り下げられたとも思う。
が、その代わり、この作品では、それらはもっと一般的な話題であり、ほのめかされてはいても、その高みや議論に到達することはなし、誰でも楽しめる作品になってたかな。
とは云え、今作品は感動的で、考えさせられ、打ちのめされるほど悲しいと同時に、心地よく、笑顔を誘うものだと感じました。
精神医学の研究を基にした隙間的な映画であることは確かやけど、演技とナマの人間性が、この映画に命を吹き込み、時間をかけて感情移入する価値を与えている善き作品でした。
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