塩湖

にわのすなば GARDEN SANDBOXの塩湖のレビュー・感想・評価

にわのすなば GARDEN SANDBOX(2022年製作の映画)
5.0
かつて十函町には一家に1台スケボーがあった→人間の数よりもスケボーが多かった、というご当地エピソードのあざやかな発展(偽証)を耳にしてリアクションしたり、その人の配るグミを食べたら飛ぶという噂をそのグミの食後に聞いたり。主人公の訪れた町を形作るイメージの幾つかは、そうした実体を伴わないコトバの予測不可能な動きに主人公が翻弄された上に成り立つ。しかし、映画が進んでいったその先で、主人公は、土地に関する詳細を掌にある存在しない紙にメモする。輪郭のあいまいな景色の生成に、今度は彼女自身が積極的に加担しだす。そして、呑む。踊る。花火で遊ぶ。なにかが決定的に欠けているはずの世界のなかでアクションを起こし起こされることでひたすらささやかに心満たされる瞬間を積み重ねていく、という様子を切り取ったこの映画は、鈴木卓爾と並走しながら、たしかに堀禎一の影も忘れずに引き連れている。なにより、怖さと平穏さはコインの裏表であると改めて強く思った。傑作。
塩湖

塩湖