アタフ

ザ・ミソジニーのアタフのレビュー・感想・評価

ザ・ミソジニー(2022年製作の映画)
3.9
高橋洋監督の新作Jホラーということで本格的な恐怖演出を期待しつつ鑑賞してきました。

Jホラーというジャンルは大好物である反面、最近の邦画のホラー映画は大衆向けなポップなホラー映画ばかりで、『リング』でおなじみの貞子を形骸化させた罪は重いです。(まあ『貞子vsk伽椰子』は面白かったですが…)
日本に"恐怖"について本気でに考えて撮っている監督は高橋洋と黒沢清以外いないのでしょうか?
そんな状況ですので本格的なJホラーに飢えていた中でのこの映画。前作『霊的ボリシェヴィキ』も個人的には結構ツボでしたし期待度は結構高め。

序盤こそジワジワと恐怖を煽る雰囲気が素晴らしくゾクゾクさせられる。
『霊的ボリシェヴィキ』でも感じましたが、高橋洋監督は何か怖い話を語るシーンの撮り方がとても上手い。語り手の表情や声色、その話から発せられる緊張感、意味深な内容、Jホラーにはこの"語り"という要素も重要だと感じます。また、古いビデオでとられた森の奥で女が生首を掲げる映像の不気味さは『リング』の井戸の映像を想起させる。

「嘘か本当か分からない母親の失踪事件を作家の中原翔子と女優の河野知美が演じる」という内容の映画であるが、映画が進むにつれ今起こっている事態がどこまで演技なのかが曖昧になってゆく。女優の河野知美が演技なのか現実なのかが理解できなくなってゆく『インランド・エンパイア』的な混沌として展開も、狂気の世界に入り込んだ行くような感じでとても怖いし面白い。

ただ終盤、急に中原翔子がポーズをとって黒魔術を使い始めた展開には開いた口が塞がらなかったですよ。。。
このシーンも本気なのか演技の一環なのかは分かりませんが、「俺はいったい何を見せられているんだ?」感は半端なく、映画の急激なジャンルチェンジにクラクラさせられます。

結局のところ、今の私にはこの映画がなんだったのかはよく分かりませんでしたが何かJホラー的なものを見れたというだけでも満足はしています。映画の真意をもっと深堀したいと思っていますが、この映画に深堀する価値があるのかどうかもよく分かっていない。
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