ツボ

劇場版 荒野に希望の灯をともすのツボのレビュー・感想・評価

4.7
この作品はぜひもっと多くの人に見てもらいたい。涙が止まらなかった。私は大学で国際関係論を専攻しているのだが、平和に関する議論になると「確かにそれって素晴らしいよね。でも理想でしかないよね。」で終わるのだ。そのような机上の空論だけが先行しているのが先進国の現状ではないのだろうか。平和は”実践”を通じて初めて訪れる。平和とは、戦争がない状態ではなく、「自然との共生」が出来ている状況も含まれることを忘れてはいけない。果たして現代は自然との共生は出来ているのだろうか?中村氏の言葉を借りれば、主役は人間ではなく、自然であり、人間は自然の恵のおこぼれを授かっているに過ぎない。

またこの作品を通して「労働とは何か?」ということも学ぶことができると思う。現代社会は分業制が進んでいる。それにより生産効率は格段に向上したのは確かだ。しかし、それによって環境の限界を超えてしまったこともまた確かだ。本来の形の労働とは、「人間と生きるために自然とどう関わっていくのか」を考えていくものだ。労働は、自分の所有財産を増やしていくためのものではない。戦禍ではあったが、中村哲さんと、彼と共に用水路を作ったアフガニスタン人たちは生きる喜びに溢れていたように見える。それでも十分幸福になることはできるのかもしれない。人と助け合い生きていく。これもまた一つの優れた生き方なのだろう。

子供たちの教育現場でプログラミングやITスキルを教え込むよりは、この映画を見てもらって人の心の在り方を学んだ方がよいと思う。「困っている人は見捨てない」。日本人が子供の頃にアンパンマンに教わった教訓ではなかったか。この教えをどれだけの人が実践できてるのだろうか。私はこれほどカッコいい人を知らない。彼の教えを胸に刻んでこれから生きていこうと本気で思った。
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