広島カップ

劇場版 荒野に希望の灯をともすの広島カップのレビュー・感想・評価

5.0
脳外科医の中村哲さんはアフガニスタンで現地の人々の命を救う為に人道支援活動を行った。
初めは医療ボランティアとして現地に乗り込んだ中村さんはやがて診療所を開設し次に「ここでは医療だけでは人々を救えない、水と食べ物が必要なのだ」と感じ、荒地を緑に変える為に彼自身が門外漢の事業である水路の建設に着手した。

その一部始終を捉えた心を揺さぶるドキュメンタリー。実に色々なことに関して目を開かされた作品で、片っ端からそれらを挙げていたら400字詰め原稿用紙は10枚を軽く超えてしまいそうな作品。
今の日本にもこんな人がいたんだと感じ、日本もまだまだ捨てたものじゃないと思い涙が出る。俺は酒場の片隅でこんなレビューなんか書いて暇を潰していていいのだろうか?とも思う。

色々な中から敢えて一つに絞ると、人が生きて行くのには情熱が如何に大切であるかということ。
様々な困難を乗り越えて行くのには情熱が絶対に必要なのだということだ。
自身の思いを達成するのに全身全霊で最短距離を行こうとする中村さんだが、多くの困難が行く手を遮り彼は遠回りをしてしまう。それでも冷静に一つ一つ問題を解決をしていく様子が具に描かれる。
その源には医師として人々を見捨てられないという静かだが力強い情熱が流れている。まるで現代の新出去定のようだ。

阿佐ヶ谷にある狭い会議室を改良したような映写スペースには、おそらくお母様と思しき女性と一緒に来ていた中学生くらいの男の子がいた。
私は彼の後頭部越しにスクリーンを観ていたのだが、彼のようなこれからの日本の未来を背負って行く人にこそ観て欲しいドキュメンタリーだった。
広島カップ

広島カップ