リプリー

ザ・メニューのリプリーのレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
4.0
ハシゴ映画二本目で、実はこちらが本命だった。

極々限られた人しか行くことのできない孤島のレストラン。そこに集まった12名の客。料理評論家、落ちぶれた映画スター、成金野郎などなど…。なぜ彼、彼女らはここに呼ばれたのか? 腕を振るうシェフのこだわりも尋常ではなく、物語も異常な方向へと展開していく…。


もうこれだけで面白そう!と思った人は見たほうがいい。期待は絶対に裏切らない。僕も映画館のチラシで本作の存在を知り、前知識は可能な限り入れずに見た。

映画館で月に何本も見ているような人からすれば実に意地悪な映画だ。
料理を提供されたとき登場人物は、したり顔で批判したり、作り手の想いを聞いてひたすら関心したり、「これは意図的に仕組まれたものだ」なんて考察を繰り広げたりする。
それはまさに映画を見る観客そのものだ。

さらにこの映画では、料理がいかに芸術的なものであっても、人の食欲を満たす即物的な役割からは逃れられないというジレンマも描く。
例えば建築は、人が住むためのものであるし、広告はいくら優れたコピーであろうとデザインであろうとモノを売るためであるという事実がある。
映画も然りだ。

では、建築が住居、広告が販促物とするなら映画(料理)は何なのか。
それは映画(料理)を見る(食す)側には分かっていることだし、本作の中でも明示される。
でもだからといって、それで何が悪いのだというメッセージを僕は受け取ったりした。

世にも奇妙な物語的な話が好きな人はシンプルにエンタメとして楽しめるし、いわゆる映画ファンは、色々と噛み締めたくなる(本作でいうと味わいたくなる)一作。