パルパティーン

ザ・メニューのパルパティーンのレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
4.2
いろんな人が見に行っている中でやっと見にいけた。このような映画を映画館で鑑賞したのは久しぶりのような初めてのような。界隈では面白いと言っている人が多く、どんな映画なんかなと思って行ってみたら、こんな皮肉の効いた作品であるとは思わなかった。ここまで考えさせられるのと伝えたいメッセージがわかりやすかった。

まずはアニャちゃんが美しい。多分だけど初めて声を聞いたのではないかと思う。ほんと美しい。

アニャの彼氏の人があまりにも見ててイライラした。そんなウンチク語ったりしても彼女は興味がない。それに気づけよと。しかし現実自分もあんな感じになりかねない。自分語りにならないようにしていかないといけない。ダサい男の見本を見せてくれた。このサイコ野郎め。

まずシェフの「食べるな、味わえ」このセリフにビビッときた。料理の本質をついている。料理をアート・芸術・物語として捉えているシェフは、ところどころイカれているなと思うけど、料理の説明をするたびに本質をついたようなことを言うので、頭がこんがらがる。シェフがメニューの一環で人殺しをしても彼のやり方であると納得するスタッフたち。倫理観を取っ払っている彼らが怖く見えた。

こわばっている顔をずっとしていたシェフにマーゴは「とある料理」を作ってほしいと言う。この頼んだ時に言っていたことが全てであるなと感じた。初心を忘れないこと。なぜ自分はシェフとして料理を提供するのだろうか。見失っていたことが思い返された時のシェフの笑った顔に少し泣いてしまった。怪物から人間に戻れた一面であったし、本来のシェフのあるべき姿だった。シェフの料理を“味わった”のはマーゴのみだった。この「とある料理」が最高に美味そうだった。最後のメニューで口を拭うのがもう痺れた。

今は誰もが評論家になりうる。知識の有無に関わらず、好き勝手に批評してその作品を分かった気でいる。こうやって映画の感想を書いている自分もそうかもしれない。この映画を観た後に書くのは少しモヤモヤしているけど、書かせてください。作った側の信念やプライドを決して馬鹿にしたり分かった気でいるわけではないので。でもどこかで分かった気でいるのかもしれない。そうならないように肝に銘じておく。


2022年69本目