原作も映画もそれぞれに魅力的。和山やまの世界観はそのままに、原作ファンの野木亜紀子が作品に込めた真摯な想いもガツンと伝わる良作だった。好き。
心身ともに揺れ動く多感な中3男子岡聡実が出会ってしまった祭林組若頭補佐成田狂児。カラオケの歌唱指導の先生と生徒のはずが、二人の関係が密になればなるほど、“これはどういう関係なんだ？？？”とこちらの心も掻き乱されていく。齋藤潤と綾野剛の掛け合わせ(原作読んでる時の脳内狂児は別の方でしたが)が素晴らしい。二人の醸し出す雰囲気や距離感も原作に忠実でとても自然。撮影はあの柳島克己ということもあって、よりチャーミングさが出ていたのかも。
合唱部の面々に少しだけ軸足を重めにし、これは聡実の物語なのだということが強調されていたように感じた。中川さん母性ありすぎ。和田くん暴走して暑苦しくて青臭い君が好きだ。
巻き戻せないビデオテープ、もう出せないソプラノの声、もう戻らない狂児と過ごしたカラオケ店での時間。その最中にいる時はわからないけど、過ぎ去った後で気付くのだ、もう二度と戻らないと。これまで何度も「紅」は聴いたが、聡実による「紅」歌唱シーンほど、ド直球に胸に届く歌詞はなかったと思う。巨大感情すぎて自分が爆発しそうだった(何言ってるかよくわからない)。
エンドロールも良い。その後のオマケはそう来たか。ここは原作の終わり方の方が好きだけど齋藤くんの年齢を考えると仕方ないのかな。
続編の「ファミレス行こ。」も狂おしくて面白い。興味を持たれた方、和山やま先生の原作お勧めです！
