コマミー

カラオケ行こ!のコマミーのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.1
【変化に抗う者同士の友情】



2024年最初に見た邦画が、本作で良かったと感じた作品だった。

"青春映画"でありながら、"ヤクザ映画"としての一面を持つのだが、この"半々の一面"を持つ本作が本当にうまく調和できていて終始ホッコリしたり感動したりともう忙しかった。

ヤクザ側としては"衰退していく稼業"、そして下手したら命を落としたり、いつ別れが来るか分からなかったりと、怖さよりも"儚さ"や"背中の寂しさ"が延々と映っているのが半端なかった。そして"成田"がヤクザとは思えないほど、"優しい表情と仕草"をしていて、そして何より"聡美"との友情とも言えるような掛け合いは凄い尊かった瞬間であった。

そして学生側。これは聡美のみならず、聡美がいる"合唱部の生徒"や映画オリジナルらしい「映画を見る部」での"ちょっと大人びた友達"との映画鑑賞シーンにも着目していて、これらの掛け合いが凄く面白い。青春映画としての儚さも勿論あるのだが、ここでコメディ色や何と軽く"BL要素"も加えられていて情報量が多すぎて面白かったシーンであった。同時に、儚さの部分としては合唱のシーンでも映画鑑賞のシーンでも自分の"発育に戸惑う姿"が凝縮されて描かれていたなと感じた。

そしてヤクザ側に戻るのだが、成田が頑なに"XJAPANの「紅」"を選曲するのにも、ヤクザとしての宿命を見てきた成田なりの考えが集約されていてエモい。面白い部分をもう一つ言うならば、成田の"下の名前"の誕生秘話が軽く笑いを誘っていた。

これは消えゆくヤクザと自分の成長に戸惑う中学生が新たな友情に出会い、聡美に関しては精神的に大人に成長し、ヤクザはそんな聡美の事を微笑ましく見守る。期待値を上げすぎず、中身を開けたら最高の絆を描いた"別の意味で紅く染まりそう"な最高の物語だった。
綾野剛の歌声と優しい表情、齋藤君の役者としての可能性がとても魅力的だった作品だった。脇を構えるキャスト達の魅力も余す事なく出ていたのも良かった。

久々に「終わってほしくない」と最後に思ってしまった邦画に出会った。
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