ぶみ

カラオケ行こ!のぶみのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.0
1700本目となる作品はこちら。

青春も延長できたらいいのに。

和山やまによる同名漫画を、山下敦弘監督、綾野剛主演により映像化したドラマ。
ヤクザの男が、組のカラオケ大会で最下位になることを避けるため、合唱部部長の中学生に歌のレッスンを頼む姿を描く。
原作は未読。
主人公となるヤクザの男・成田狂児を綾野、合唱部部長の中学生・岡聡実を齋藤潤が演じているほか、芳根京子、北村一輝、坂井真紀等が登場。
物語は、歌が上手くなりたい一心でカラオケに誘う狂児と歌唱指導を行う聡実という、設定だけ見ると荒唐無稽できちんとした話になるのだろうかと思うものなのだが、口には出さないものの、カタギには手を出さないぞという姿勢が其処彼処から滲み出ている狂児と、嫌々ながらも徐々に心開いていく聡実とのやりとりが実に自然であり、すんなりと違和感なくその世界観に入り込めるのは、特筆すべきポイント。
何より、ヤクザとカラオケという、似ても似つかない対極的な要素を組み合わせる可笑しさをベースに、狂児と聡実の会話が、間といい、言葉のチョイスといい、カット割といい、絶妙な笑いを醸し出しており、多くの人のツボにハマると思われるものとなっている。
また、オープニングのタイトルバックの文字がネオン輝くように色が変化するのだが、しっかり右下にある映倫の表示も同じように彩られていたのも芸が細かく、監督の仕事の丁寧さが伝わってきた次第。
クルマ好きの視点からすると、組の若頭補佐である狂児が乗るのが、黒い旧型のトヨタ・センチュリーで、装着されていたナンバープレートのひらがなが、現実にはあり得ない「ん」だったのは、何気にツボったところであるとともに、決して市場に多く出回っているとは思えず、かつ決して安価ではない旧型のセンチュリーを、終盤本当にクラッシュさせたのかどうかは気になったところ。
加えて、そのセンチュリーをカラオケ店に乗りつける際に、決して駐車場の枠には入れず、入り口前に堂々と横付けしていたのは、それだけでヤクザらしさを醸し出すものであり、まさに言葉がいらない演出の代表例。
基本、軽妙かつテンポ良い会話によるコメディ調なのだが、そんな中でも、ヤクザ社会の一端が垣間見えたり、居場所が失われていく現実をキチンと描いていたのは好印象であり、芳根、北村、坂井に加え、狂児の両親を演じたのが加藤雅也とヒコロヒーというキャスティングも絶妙であるとともに、『紅』のリアルタイム世代としては、まさか、この歌がコメディ作品の鍵になる日が来るなんて夢にも思っておらず、気がつくと頭の中でヘビロテで流れ続けている良作。

久々やわ、光合成。
ぶみ

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