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カラオケ行こ!のICHIのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.1
オープニングの雨に濡れるヤクザ者の背中のショットはいい感じで彼がたどり着くのが大阪の中学校の合唱コンクール会場で、山下敦弘の大阪といえば「美園ユニバース」という素晴らしい作品があって期待が高まる。が、その後の展開が肝心な部分が描かれていないので観ていて気持ちが入って行かない。ヤクザが中学生の男の子に歌を教えてもらうのはいいのだけど、なんであのヤクザがこの中学生にここまでアプローチし続けるのか、彼の思いが腑に落ちないし、その中学生が声変わりに悩んで合唱部の活動に迷いが生じていることもエピソードが足りないというか、次の大会がどれくらい大切なのかもよくわからないし、人物があまり追い込まれていない。その追い込まれない感じが山下敦弘っぽくていいのかもしれないけど、「リンダリンダリンダ」とか「超能力研究部の3人」とか「美園ユニバース」とかは脱力感と同時にヒリヒリするような切実さが感じられてそこが魅力だったと思う。ラストはスナックの彼の歌と合唱コンクールの歌がオーバーラップするかと思った。声変わりで高音が出ない彼が歌を絶唱するシーンは良かった。
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