Jun潤

カラオケ行こ!のJun潤のレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.2
2024.01.23

綾野剛主演×野木亜希子脚本。

全日本合唱コンクール大阪大会。
岡聡実が部長を務める合唱部は3位の成績を収める。
部員の間に充実と不満が入り混じる中で、聡実は顧問が忘れたトロフィーを受け取るために1人会場に残る。
その時、聡実が出会ってしまったのは、四代目祭林組若頭補佐・成田狂児だった。
聡実を前にした狂児は言う、「カラオケ行こ」
狂児は、組長の誕生日に毎年行われる、最下位の組員は組長の手でヘタクソな柄の刺青を掘られるというカラオケ大会に向け、その歌声に惚れ込んで聡実に指導をお願いする。
初めは半ば強引にカラオケに連れて行かれ、嫌々狂児の『紅』を聞いていた聡実だったが、学校にまで現れてカラオケに誘う狂児に対し、怖いものだと思っていたヤクザとは違う憎めない何かを感じ、特訓に付き合う。
そんな聡実も、声変わりの時期を迎え、ソプラノパートを思うように歌えない悩みを抱えていた。
同じ日に開催される組長の誕生日会と合唱部として最後の舞台となる合唱祭に向けて、ちっちゃい悩みを持つ者同士、ちっちゃい愛の物語を紡いでいく。

綾野剛の『紅』が聞けるのは今作だけ!?
これは素晴らしい、『MIU404』にて伊吹藍という愛されキャラを創り出した綾野剛×乃木亜希子タッグが、今作では憎めないヤクザ・成田狂児という新たな愛されキャラを産んでくれました。

未読ですが原作パワーも強いのかなと思いつつ、今作はやはり乃木亜希子脚本が強すぎましたね。
ちっちゃいスケールでちっちゃいドラマを描き、細かい笑いも散りばめながら、先の展開に対する予想がどんどん広がる奥深さを発揮していました。
結末については、コメディ寄りにも感動寄りにも振れるような予想をしていましたが、その予想を悉く外してきてくれたものの、あともうほんの少し足りないような感じがしました。
和子のことやデュエットで『紅』披露など、観せて欲しかったものもあるにはありますがこれはこれで◎
あんだけ引っ張った組長をちょっとおちゃらけちゃってただけにしたのがちょっと…て感じ。

いやしかし今作なんといってもキャラクターが良い。
悲哀がありそうで全くない狂児もちゃんとヤクザであること、狂児たちに振り回される子供らしい聡実にも中学生なりの悩みがあること、強面だけど可愛さもあるヤクザ達に、恋愛や不真面目に対して反骨精神を見せる和田、面倒見のいいちょっと大人な同級生女子達、空気の読めないももちゃん先生。
今作で描かれたのは各キャラの表面だけで、それぞれの背景や将来などに対していくらでも想像が膨らませられる深みが、あるのかもしれないし、ないのかもしれない。
個人的には聡実の父親は本当の父親ではないのでは?と思ったり。
聞き間違えかもしれませんが「お父ちゃん」「お父さん」の呼び方の違い、派手な傘を上から見つめる画角と、もしかしたら聡実は狂児に対して父性を感じ、求めていたのかもなんて思いました。
しかしそこを明確に描かないのもまた良い。

演技に関してはメイン2人が上述のキャラを表現しきっていたことに尽きますね。
もうすっかり悪徳刑事やヤクザが板についた綾野剛はもちろんのこと、声変わりという成長期の男子に訪れる微妙な心の機微を表情に出す齋藤潤の今後には期待しかありません。
主題歌を2人で歌ってくれたらなー
あとは『クローズZERO Ⅱ』ファン的に同じ組内に綾野剛とやべきょうすけがいることにニヤリ。
Jun潤

Jun潤