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カラオケ行こ!のbebeのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.7
 ある中学生がヤクザと過ごす半年間とそのプラトニックな関係。BLを感じる。ある冬の濃密な「関係」がある。年齢の逆転した師弟関係であり、白と黒の歪な関わり合いであり、自分のために相手を頼る、奇妙な関係性である。

なぜカラオケに行くのか。ここばかりは中学生のリアリティでは追いつけない。ヤクザですよ?

「無理せず自分に合う音域を選ぶこと」
「力むと余計に声が出ない」
「自分の声を聞くこと」
 思い返せば、ヤクザ相手のアドバイスでは随分と立派なことを言えている。でも自分のこととなると、声変わりというどうしようもないことについて変化を恐れ、悩み、苦しんだ。肩に力が入って、自分のことが分からなくなった。

 中学の部活動の解像度は高い。変声期を迎えた男子にソプラノパートは厳しい。いや、重要なのはそこではなくて、声変わりは突然、すごいスピードでやってくるものだから、中学生には処理し切れないということ。とりわけ、部活動を通して声が生活の大きな要素になっている合唱部には、声変わりが持つ影響力は格別のものだろう。
 処理し切れない本人。事情を知らず(知ってもきっと理解できないだろうが)、合唱に本気で打ち込めていないと責める後輩。察する女子。先生、コーチ。1人の声変わりが、かくも多くの人に関わる現象とは、当人はまさか思うまい。
 
映画みる部にはぜひ入部させていただきたい。もちろん幽霊部員として。『白熱』『カサブランカ』『三十四丁目の奇蹟』『自転車泥棒』、全てを見たわけではないからその内容についてはわからないが、暗く静かなこの部のシーンは映画の大きな区切りになっていた。

4年後はどんな声で歌うんだろうか。
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