れおん

カラオケ行こ!のれおんのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.2
合唱コンクールで優勝ができなかった。部長の岡聡実は、悩んでいた。組長が主催する恐怖のカラオケ大会、罰ゲームは、変な刺青を入れられること。四代目祭林組・若頭補佐、成田狂児は、悩んでいた。ふたりは出会ってしまった。歌で繋がったヤクザと中学生。「カラオケ行こ!」来たるカラオケ大会に向け、聡実による狂児の歌唱指導がはじまる。

狂児のお悩み解決のため、無理矢理巻き込まれてしまった聡実くんだが、実は、聡実には狂児のような存在が必要であった。お互いの目的・欲望のため、時間をともに過ごし、さまざまな困難・障壁を超え、互いにかけがえのない存在となり、ともに解決の糸口を見出す。単純明快なストーリーラインにもかかわらず、飽くせず感情がふたりに乗っかっていけるような躍動感がある。

映像を立てつつも耳に残る、掴みある世武裕子氏の「音楽」。そして、野木亜紀子氏の無駄を削ぎ落としたド直球、シンプル脚本が、伝えるべくメッセージを端的に、観客に届けることができる。狂児と聡実の行動原理に違和感はなく、それぞれの"問題"に向けて立ち向かっていくのが爽快。綾野剛さんと齋藤潤さん、素敵。ただ、他のキャラクターの希薄さが否めない。子役の演技は下手すぎるし、おまえなんやねん状態の登場人物が多すぎる点は、冷める要因になっていった。

「綺麗なものしかあかんかったら、この街ごと全滅や。」
『不適切にもほどがある!』じゃないけど、法令遵守とか、コンプライアンスとか、物事を"本来、あるべき姿"へと改革していくことに異論はないが、"本来、大切にすべきもの"までをも改変するように切り詰めていくことで、失われる「綺麗なもの」を、どうか残していきたいと思う所存。
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