豚

FALL/フォールの豚のレビュー・感想・評価

FALL/フォール(2022年製作の映画)
1.0
自分の映画史上、初めて映画館を退出しようと考えました。

夫をクライミングで亡くしたベッキーと親友であるインフルエンサーのハンターが、悲しみを振り切るべく600mの廃テレビ塔に登っての撮影に挑むワンシチュエーションスリラー。
「オープン・ウォーター」や「フローズン」のようなアイデア一発系のスリラーは大好きで、同様にそのインパクト抜群の設定に思わず惹かれた。
自分は結構な高所恐怖症で、観覧車やロープウェイはもちろん、長い階段やエスカレーターとかにも恐怖を感じるタイプなのだけれど、「さすがに映像なら大丈夫だろう」と軽い気持ちで鑑賞。
結果、観る前に抱えていた謎の安心感は粉々に砕け散り、人生最悪の映画体験となってしまった。

全体的に人間心理をかなり突いた演出で、きっちりと「こう来たら怖いな」という部分を拾ってくれるありがた迷惑な展開。
ざっくりいうとテレビ塔の内部梯子を登る序盤、吹きさらしの梯子を登る中盤、頂上についてからの終盤という3シークエンスに分かれているのだけれど、それぞれ特有の恐怖感を見せつけてくれるので、最初から最後まで意外とダレない。
とくに序盤の内部の梯子を登るシーンが特段に怖く、観ているだけで呼吸がしづらくなってしまった。

映像の作り込みや、まるで本当にその場にいるような臨場感は凄まじいの一言。
この手の映画ではおざなりになりがちなストーリーも意外と綺麗に作られていて、全体的にとても丁寧。
凡百のB級スリラーとは一線を画す、相当に計算して作られた作品だと感じる。
だからこそ半端ない恐怖感だったわけだけど…。

俳優陣は全然知らないけど、いずれも「スクリーム」や「ハロウィン」みたいなホラーに出ていたみたいで、良いところ揃えたなと思う。

序盤からあまりにも怖くて、色んなシーンで目を瞑ってやり過ごそうと思ったのだけれど…。
この映画、映像もさることながら"風の音"がめちゃくちゃ怖い。
ゴウゴウバシバシガーガービュワビュワみたいな、とにかく無節操に吹き付ける風の音のせいで、目を瞑るとで想像で逆に恐怖が加速するという悪魔みたいな仕掛け。
途中、本当に体調が悪化してきて出ようと思ったんだけれど、館内ほぼ満員&友人が取ってくれたスクリーン中央・列ど真ん中という最高&最悪なポジションのせいで動くに動けず、ひたすらに恐怖体験を耐える100分となりました。
良い席取ってくれてありがとうな、一生恨むぞ。

とにかく映画館で観ると強烈なインパクトがあります。
自分の中で「もっとも怖かった映画」と「一生忘れられない映画」の1位を更新しました。
高所恐怖症の方は本当にお気をつけください…。
とはいえ、家のようなリラックスできる環境ならそこまで怖さはないかも知れません。

ただ、自分はもう二度と観ません。
豚