このレビューはネタバレを含みます
地上600mの鉄塔のてっぺん、広さ一畳あろうかという足場を舞台にしたソリッドシチュエーション/サバイバル/サスペンス映画。
「主人公が置かれた状況そのものが敵」タイプの作品は『ゼログラビティ』も『127時間』も死ぬほど怖かったけど、『FALL』は群を抜いて怖い。
「落下」は『チェンソーマン』で言うところの"根源的な恐怖"の一つ。
人間ならば本能的に無条件で怖がらざるを得ない主題だ。
(体が高いところから滑り落ちる恐怖を扱った作品と言えば『CURVE』って短編サスペンスもあったね)
しかも「少しでも気を抜いたら落ちて死ぬ」という状況が最初から最後まで続き、緊張の糸が途切れない。
序盤はハラハラしつつも
「悟空やゴンならこんな塔もスイスイ登るんだろうな〜」
「トム・クルーズも余裕だな」
とかノンキな事を考えてたけど、主人公たちが鉄塔の頂上にたどり着いて以降はそんな余裕はゼロ。
緊張しすぎてマジで気が狂うかと思った。絶望感が半端でない。「お願いだから早く生還してくれ」とこれほど念じた映画は初めてだ。
高い場所は好きなほうなのに、これ観て高所恐怖症になるかと思った。
そして「死んだ仲間が主人公の心に現れ激励してくれる」系の演出。
これが好物で、『ブラックフォン』『7SEEDS』『ゼログラビティ』同様にショックと感動が得られた。
それから本作のキーキャラであるハゲワシ。彼らは下記の役割を担わされている。
「空が飛べるという優位性を振りかざし、安全な場所から弱者をいたぶれる圧倒的強者のポジションに酔ってるクソ」
主人公が弱るのを待ち、食い物にしようとしつこく襲いかかるスカベンジャー野郎だ。
「ハゲワシはいけすかない連中」というイメージを序盤からたっぷり擦りこまれているからこそ、クライマックスで主人公が1頭捕まえて惨殺してむさぼり食うシーンには快哉を叫んだ。
「やれ!殺せ!殺せ!殺せ!鳥刺にして食っちまえ!」
「飛べるからっていい気になってるからだよ!!!!」
「このハゲ!!!」
とにかく痛快。そのあと主人公が別のハゲワシとガンの飛ばしあいで押し勝つのも超グッドだった。
そして最後の「生き抜くためにはやらざるを得ない」ショッキングな手段。
赤のALL STARを目にするたびこの映画を思い出しそうだ。