社会のダストダス

イコライザー THE FINALの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.8
ついに公開ですね、デンゼルおじさん演じるロバート・マッコールの秒殺シリーズ3作目。

デンゼルおじさんとダコタ・ファニングという『マイ・ボディガード』以来18年ぶりの再共演という熱い組み合わせ。デンゼルおじさんのダコタとの会話シーンは、醸し出す雰囲気が完全に親戚のおじさんで、「ダコタはわしが育てた」という謎のプライドを感じさせる、この映画をトム・クルーズおじさんが観たら嫉妬でブチギレるんじゃないかと思った。

1作目はホームセンター職員、2作目はタクシー運転手、そして3作目はまさかの無職!?だから邦題がザ・ファイナルなのか。まあ、今回は旅先での出来事なので、実際はまだタクシー運転手をしていたのかもしれないけど、終活(あるいは就活)を始めているからザ・ファイナルという訳ではないはず。

そんなマッコールさん、一時的にニートになってもお節介は相変わらず。素性の知れない自分に対して良くしてくれた善良な地元民に対してはもちろんのこと、CIAのイチ捜査官であるエマ(ダコタ)に対して解決に導けば大金星となりえるヤマの助言を度々する。本作のマッコールさんが悪人視点から見るとかなりホラーなので、このあたりの描写は少しレクター博士っぽくも感じた。

マッコールさんとエマのやり取りは一見すると元々はイタリアの事件に関しては無関係だったエマをわざわざ巻き込んだようにも見えるので、終盤にエマが見舞われる災難を考えればマッコールさんらしからぬ失態といえるかもしれない。本作は一応単独でも成立するストーリーだが、マッコールさんとエマの接点は2作目を予習していたらストーリーの途中でも気付けるようになっていた(大体想像はつくかもしれないが)。

新たな友人たちとのつながりが強調される一方で、意外なほどあっさりしているのが本作の悪役たち。イタリアンマフィアの正真正銘の外道なのだが、1作目でDIYの片手間にロシアンマフィアを駆逐したマッコールさんの敵ではなく、その凄みはもはや戦いにすらならないというレベルに到達している。マフィアたちが「明日あの男を始末する!」と息巻いているところ、お前たちに明日は無いと言わんばかりに直ぐに殺戮ショーが始まったのは笑った。

印象的だったのは冒頭のケガから命を救ってくれた医者のエンゾからの「私が助けたのは良い人間か、悪い人間か?」の質問に対して「わからない」と答えたマッコールさん。今までのシリーズでも悪役や助けた相手からも何者かと聞かれるたびに、決まって答えなかったけど、分からないから答えられなかったんだと納得できる。

シリーズ作品の長尺化が目立つ昨今において1作目の130分から10分ずつ短くなっているという珍しいパターン。流石に70近くになったデンゼル・ワシントンも突き蹴りは厳しくなってきたのかアクションシーンは控えめになった気がするけど、その分ドラマパートをかなり時間かけて描いてくれていたので悪役たちがあっけなく地獄に送られていく様は結局のところ爽快になる。

奇跡や祈りとは善人の為だけの言葉ではない、本作の悪党たちはただタイミングが悪かっただけ。本作で一応の完結なのは寂しいけど、ラストシーンの美しさが完璧だったので、マッコールさんが新たな定職について生活が安定するまでは幸せなまま休ませてあげたい。