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イコライザー THE FINALのharunomaのレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.1
 階段通りを散策するデンゼル・ワシントンはペドロ・コスタのようだ。杖と壁を伝って、急勾配の狭い階段を降りるデンゼルのゆっくりと鈍い身体性の身振りが素晴らしい呼吸を生んでいる。すれ違う老婆に、Go Slowly とすら挨拶される。ロッセリーニ。コルレオーネ。回復期へ、宙吊りの港町階段通りのヴァケイションは、マッコールのいつも儀式を超えて少なからず記憶の時間を形成している。デンゼルはやはりオリヴェイラの映画に一度は出演すべきだった。あるいはシチリアでイーストウッドと。

 冒頭、シチリアでの、強烈なトップライト後光のデンゼルのアクション、最強すぎるが故か、地を這う相手に慈悲のなさすぎる感じが、もはや少し悪魔なのだが、そんなに好きではないロバート・リチャードソンのカメラは、案外フークアとマッチしていた。
中盤のシーンでも、絶命する相手の目をずっと見つめながら惨殺するデンゼルは、もはやレヴィナスの定理はここにはなく、切り返されたショットはしかしデンゼルの先にはない。今回はポーラ・パットン風の女性が決定的ではないのがその証左なのかも知れぬ。
ダコタ・ファニングはほとんど活躍しない。悪役も最後以外はパッとしない。笑うとデンゼルは実はマット・デイモンに近いことに気づく。

不意打ちに背後から撃たれ、満身創痍のまま、南イタリアの崖に沿ってつくられた港の街、マッコールはボストンではなくイタリアに永住するらしい。イタリア万歳。
やはりクロエ・グレース・モレッツがいた分かりやすい1が一番好き。
決戦もイタリアの邸宅でも、やりすぎのハリケーンでもなく、武器の創意工夫がおもしろい土砂降りのボストンのホームセンターがよかった。ボストンの街並みが映ると落ち着いてしまうのは如何ともし難い。やはり帰るべきだ。
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