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イコライザー THE FINALのMasatoのレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.1

下町人情ホラー

元DIAのロバート・マッコールさんはイタリアの下町で隠居生活。人が良すぎる下町の人々と悠々と暮らして幸せ満喫中。そこに運悪くやってきた悪党を近所迷惑に対処するオジサンのようにぶち殺していく下町人情ホラー。

これは自分も知らなかったんですが、ロバート・マッコールは元CIAではなく国防情報局のDIAです。日本では和訳者がいい加減で勝手にCIAにされていました。これが少し関わってきますので予め知っておいてください。

ナーメテーターの1作目からポリティカルなスリラーへとシフトチェンジした2作目がドラマとの噛み合いが悪く、ドラマの描写は良いけどジャンル映画としてはイマイチ…な点が残念だったのが一転して、3作目の本作は舞台を外国に移したおかげで1作目のナーメテーター感が舞い戻ってきたことが嬉しかった。

むしろ古風なテイストを忠実に再現していて1作目よりももっと古臭い。西部劇やノワールに近い渋さと暗さで個人的には好みだった。人情的で体に馴染んでる物語。デンゼルの年齢を考えてかアクションを神出鬼没のホラーへと演出を変更したせいか、ランボー5のような善悪の倫理観が非常に曖昧になった世界観を醸成していて、見ていて非常に奇妙な映画になっていると同時に、この奇妙さはかつてのノワールを彷彿とさせた。

正直見ていると、どっちが悪人で善人なのか分からなくなって来る。「この人良い役なんだよな…?」と構図的にはロバート・マッコールが悪役にしか見えないようになっているのが笑えてしまうのと同時に、彼は善人なのか悪人なのかという問いを出せない答えとして打ち付け、なにをもって「善い」のか、彼の倫理観のあやふやさを映画の演出要素含めてメインテーマとしているところが良かった。だからこそ、彼には常に死というものが付きまとっているし、孤独であるという無情さがある。さまよえる幽霊そのもの。

アントワーン・フークア監督の前作「自由への道」の非常に暗くて無情な雰囲気だったそれに今作も似ていた。シリーズを通して彼を孤独で人助けをすることで孤独を消し去っている哀しいキャラとして描いてきたが、その哀しさの向こう側に行ってしまったような感じに感情の奥深くの闇があった。前作での哀しい出来事も重なって。しかしながら、その先に人と接することで光を感じさせる物語でもあり決して暗いだけではない。むしろ人は人によって救われるとも言っているようだった。

1作目のホームセンターで死のピタゴラスイッチをしていた頃が懐かしいが、毎作根幹は変えずともジャンルを少しづつ変えて飽きさせないのはよく考えられている。イタリアでどんなやばいことをしていても、ロバート・マッコールになればガキンチョがヤクザごっこしてる程度にしかならない。その圧倒的な強さに笑いと爽快感と怖さが一挙に味わえて最高でした。デンゼル・ワシントンがチャールズブロンソンにしか見えない。

これまたニクいのがデンゼル・ワシントンとダコタ・ファニングと共演させたということ。傑作映画マイ・ボディガード以来の共演で会話シーンはなんか映画の枠超えてきたよね。感情溢れたー。そしてダコタ・ファニングの役柄も見事だった。
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