このレビューはネタバレを含みます
そして彼は
善なる神の使い。利他的なサイコキラー。きっと彼は2つとも当てはまるだろう。それがロバート・マッコールという男だ。過去2度に渡り彼は居場所と大切な人を傷つけられてきたが全てにケリをつけてきた。そんな彼の新たな居場所になりそうなのはイタリア。新たなる一歩を踏み出す彼の前にマフィアの悪意が迫り来る時、眠れる獅子は呼び起こされる。"抹消"し"救済"する平衡装置の擬人化の最終章は余りにも暖かく穏やかな最後だった。
前2作は静かに力強く打ち負かすアクションがメインだったが、今作はマッコールという人物の行く末をメインにしたドラマに。これまで我々観客はマッコールの活躍と恐ろしさを思う存分見届けた。だから今回はマッコールの行く末を見届けて欲しいという気持ちが詰まったためこのドラマ仕立てになったのも納得いく。我々は利他的で恐ろしいがとても優しいロバート・マッコールを知っている。だから今度は彼の内面をよりもっと知りその上で彼がどんな結末を見届けるのかを気になるような作品にするならアクションメインではなくドラマにしよう。非常に正しい切り替え方だと思う。
マッコールを巡るドラマも多角的だが、一つ一つがとても印象的だった。突然マッコールから電話を受けデスクワークから現場に駆り出されるCIA捜査官とシリーズ最短の上映時間ながらヘイトの溜まるスピードが瞬足なマフィアにマッコールと接する住民たちのドラマ。これまで同様ながらとても印象的な場面が多かったのはイタリアの街並みが美しかったからだろうか。不思議な事にこれまでよりとても親しみやすい住民たちの姿を見てて思ったのだが、これはおそらく下町を舞台にした映画なのかもしれない。あの風情ある人々の生活と人情に溢れた活気はどこか日本の下町風情に通ずるものがある。そういう点も含めて今作のドラマはとても温かく感じた。
マッコールさんの行く末はぜひ映画館で見届けてほしい。彼の動きも冴えてるしクライマックスの恐ろしさはホラー映画に匹敵するレベルだったし何より"求められていた終わり方"をちゃんと描いてくれている。大丈夫。きっと温かい気分で終われる。約束するよ。
踊った