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イコライザー THE FINALのIDEAコメント休止中のレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.6
最終作である今作では、1作目のようにホームセンターの店員であるという設定を活かして悪人どもをDIYで始末するわけでも、2作目のように嵐の中で特殊工作員時代の元同僚と大立ち回りの戦いを繰り広げるわけでもない。
今回は、悪人どもを抹消するシーンの残酷さを増してマッコールさんが最強のエージェントであるというインパクトを損なわないようにすることでアクションの満足感は維持しつつも、マッコールさんと彼を取り巻く人々の心の交流というドラマパートに強くフォーカスした作りだ。

マッコールさんはこれまで何人もの人、いくつものコミュニティをあるべき姿に戻し(イコライズ)、守ってきた。
しかし今作では冒頭で重傷を負ったマッコールさんが善良な人々に助けられるところから始まる。勤勉な警察官、命を尊ぶ医師、そしてマッコールさんを暖かく家族として迎え入れてくれるイタリアの港町の人々。そういったコミュニティに触れ、イコライザーであることを1作目のラストで自覚したマッコールさんは、イコライズのためにたまたま訪れただけのイタリアで、「もしかしたら自分の居場所はここではないか?」と思い始めるのだ。

重要なのはこれまで絶対的な強さで敵を屠り弱きを救ってきたマッコールさんが怪我人という弱い立場になり、助ける側から助けられる側にまわったということ。
傷が癒えるまでの期間、マッコールさんはイコライザーとしてではなくロバート・マッコールという一人の善良な男として束の間の安らぎを得たのだ。


注)ここより下は内容に触れます。過度なネタバレはありませんがご注意ください。


その穏やかな日常を、家族のように思い始めた人々を、故郷のように感じるこの街を、踏み躙るやつは当然抹消されるわけだが、今回は単独ではなくCIAの新人エージェントをあえて巻き込み敵を追い詰めていく。CIAを巻き込む理由付けが終盤まで判明しない作りのため、鑑賞途中はCIA要らないだろ?と思ってしまうわけだが、何故CIAの新人エージェントをあえて巻き込んだのかはラストで明かされるまでのお楽しみだ。私としては非常にエモーショナルなニクい演出だったと好感が持てた。

ラスト、自分がいるべき場所を遂に見つけたマッコールさんは元特殊工作員イコライザーとしての重荷を下ろし、几帳面で親切な一人の男として新たな人生を歩み始める。
これは暴力で支配しようとする巨悪に対する、小さな港町というコミュニティに暮らす人々の勝利であり、また、弱きを助け強きを挫くイコライザーとしてのマッコールさんの生き方がある意味肯定された瞬間であり、イタリアの小さな港町に見事に溶け込んだマッコールさんの姿を見て、今度こそ彼の悲哀に満ちた心も遂にあるべき姿へと還ったのだとそう思い胸が熱くなるのであった。

1作目のように思わず(不謹慎にも)笑ってしまうようなマッコールさん無双を期待した方は肩透かしを喰らったかもしれないが、これは監督がインタビューでハッキリと語ったように続編構想なしの正真正銘のFINALである。
最終作だからこそ、ロバート・マッコールという一人の人間が行き着く先を人々との交流を通してしっかり描く必要があったのだと感じた。3作を通じて、ロバート・マッコールがイコライザーからただのロバートへ回帰していくのを見届けるためのシリーズだったと考えれば、今作に何らかの物足りなさを感じた諸兄もある程度腑に落ちるのではないだろうか。

ロバート・マッコールの旅路はこれにて終幕。
彼が、亡くした奥さんへの想いと共に、暖かな人々に囲まれて穏やかに過ごしていけると信じて筆を置くことにする。

IMAXで封切日に鑑賞。

(2023.10.18追記)
シリーズは完結したが、マッコールさんの過去を描く作品が僅かな可能性ながら検討されている噂が。
主演はデンゼル・ワシントンのまま、インディ・ジョーンズ最終作などで使用された若返りのCG技術を活用して制作されるかも?とのこと。
監督のリップサービスかもしれないが、もしそうなら『イコライザー THE beginning』を観たい方も多いはず。
期待し過ぎないように続報を待ちたい。