しの

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界のしののレビュー・感想・評価

3.4
インディ風ロゴからの20世紀パルプ・マガジン風OPでテンションは上がるし、その古典的世界観のなかで親子三世代の交流と今日的なエコロジーについて伝える試みは面白い。ただ、肝心の異世界における冒険活劇の切迫感や、テーマへの踏み込みはヌルめ。無難。

「とんでもない異世界に来ちゃった!」という切迫感は全編通して薄い。途中途中のドラマパートがやけに落ち着いた感じで作業的に挿入されるし、マスコット的な異世界生物なんてほぼ人間だし(グッジョブサインさせたらダメだろ)。ここの切迫感がないと終盤の真相が活きない気がする。

その真相自体は序盤で勘付けてしまうものではある。ただ、地球が一つの大きな資源だという当たり前のことに世界が気付き始めた今、やはりタイムリーな話だなとは思うし、共生と持続可能性というテーマを親子三世代の揉め事に象徴させているのはスマートだ。スマートすぎる気はするが……。

これは同監督脚本の『ラーヤと龍の王国』でもそうだったが、落とし所がとても大事な話なのに、なんだかふんわり上手くいきました、で結論づけてしまうのは肩透かしだ。こうなると、異世界が大きな生態系というより、人間たちのドラマのために用意された舞台に感じられてしまう。そもそも、活劇のなかでテンポよくドラマを語っていく手腕はむしろ前作から後退している気がする。

とはいえ、そこそこにワンダーがあってハラハラできてハートフルで時代性のあるテーマに触れられて……というファミリー映画としては悪くないと思う。

※本作について語った感想ラジオ
【ネタバレ感想】SDGsの入門編?ディズニーアニメ『ストレンジ・ワールド』を語る https://youtu.be/0_6m0URVOqs
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