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夜、鳥たちが啼くのEDDIEのレビュー・感想・評価

夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)
4.5
人は何度も過ちを繰り返す。
相手の気持ちは全ては分かり得ない。
人間の依存性だけでなく、多面性を巧く表出させる。求め合うからこそ一緒にいたい、でも1人でいたい。
人間とは何と分かり難く我儘だろうか。長回しが物語の緊張感をより高める、年ベス級の力作。


素晴らしい作品でした。
さすが城定秀夫監督、あっぱれ。

山田裕貴が芽の出ない小説家、松本まりかがシングルマザー役。
なぜこの2人はふたつ屋根の下の“半同居”生活をしているのか。その理由が徐々に明らかになる構成から物語の結末まで満足度の高い作品。劇場公開されたら間違いなくもう一度観に行きます。

一軒家とプレハブとふたつの住居を軸に長回しで撮影する贅沢なカット、寄りと引きのバランスが実に素晴らしい。
くっつきそうでくっつかない2人が遠慮し合い、だけど求め合う、そんな牽制のし合いはまさに“だるまさんが転んだ”。
『ある男』にも出演したカトウシンスケ氏が見事なキーパーソンぶり。

とにかく山田裕貴の二面性のある演技が素晴らしすぎました。物語の前半と後半でまるで違う人物のよう。怪しさと妖しさを纏う彼の存在感は最後まで拭えず、結末が読めません。
松本まりかもお見事。やはり声が良い。不安定で居場所を求め彷徨うあの雰囲気は容易に真似できないでしょう。
こんな人間関係もアリだと思わせられました。

余談ですが、最近久しぶりにファイナルファンタジー10をやっていて、そのキャラクターのリュックの声を聴いてたので、映画の中で松本まりかが割と大きい声を出した時に「リュックだ!」ってなりました。笑
これまでFF10はインターナショナル版でやっていたので、実は最近初めて日本版のリュックの声をちゃんと聴いたんです。

城定秀夫監督の2022年公開作品は『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』、脚本作品は『猫が逃げた』『よだかの片想い』とあるが、個人的には本作『#夜鳥たちが啼く』がダントツで好きですね。
原作者の佐藤泰志実写化作品との相性も良いので、高評価は必然だったのかもしれません。

〈キャスト〉
慎一(山田裕貴)
裕子(松本まりか)
アキラ(森優理斗)
文子(中村ゆりか)
邦博(カトウシンスケ)

※2022年新作映画154本目
※2022年自宅鑑賞205本目
※Fan'sVoiceオンライン試写会にて
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