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夜、鳥たちが啼くのmityのレビュー・感想・評価

夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)
3.5
今を健やかに過ごすためにふたりが決めたことだから、きっとあれで良いんだと思う。歪でも普通じゃなくても、心に空いた空洞を埋めるには、互いが必要で。それは、小さな身体で精一杯のシグナルを送っていたアキラにとっても、同じだったと思う。

行き場のない苛立ちを他人にぶつけ、物に当たり、自分は泣くことしか出来ない慎一。その何とも身勝手な行動に、恋人が我慢できないのは当然だと思った。嫉妬深い男の物語を書いては破り、また書いては破る。吐き出しても吐き出しても無くならない自分に対する憤り。そんな苦しさを抱えた慎一の元にきた裕子もまた、どうしようもない寂しさを抱えていて。アキラが寝た後に家を出ては、酔って帰ってくる裕子。母屋とプレハブと、その距離の分だけ互いに踏み込まないふたりの間の空気が揺らいだ瞬間、互いの体温と共に求めたのは、安心感だったように思った。

裕子の離婚の経緯が、偶々そうなってしまったとしても、慎一に対する当て付けのようで、何か裕子にとばっちりがきたように感じてしまった。裕子が離婚届にサインをした時、その向かいで不機嫌そうな表情を浮かべていたのが、印象的だった。

きっと長くは続かないだろうふたりのこれから。でも、そこに仄かな光をみたのなら、それはふたりにとってきっと正しい。そう思える優しいラストだった。


#130_2022
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