大道幸之丞

夜、鳥たちが啼くの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

佐藤泰志の短編が原作。佐藤作品はどれも何か大きな事件が起こるわけではない。「草の響き」のように死亡者がでる事は稀で、

どちらかと言えば個人が内包している「狂気」が日常と周囲に及ぼす作用を描いている印象がある。

本作も10代で受賞した、早熟ながらその後泣かず飛ばすになり、思うようにいかず、生計はコピー機メンテナンスの仕事に就き、創作活動は深夜に取り組む男岡田慎一(山田裕貴)が主人公。

彼ははそのジレンマをぶつけるように酒を飲んでは同棲中の文子(中村ゆりか)を監視し、ほぼDVで縛ろうとし、挙げ句逃げられてしまう。

ドラマはライブハウススタッフのバイト中にお世話になった店長が離婚する事になり、何かと世話になった妻子を一時的に受け入れる事になったところから始まる。

離婚したばかりなのに母親裕子(松本まりか)は子供アキラ(森優理斗)を寝かしつけると抜け出して毎晩、男と逢瀬を重ねる。慎一とは最初こそはしっかりとした間合いがあったのだが、誰もが予想する通り慎一と裕子はやがて関係を持ってしまう。

そして子供が介在しながら機嫌を取りつつ、酒はやめられないがなんとかDVに及ぶこともなく慎一は自覚が徐々に湧いてきている。

印象的なのは、花火大会の晩に慎一が思いつきで「だるまさんがころんだ」を子どもたちと興ずるが、その帰路で暴力沙汰を警察に取り押さえられている男立ちに向かって、アキラがそこに向かってタガが外れたように止める声も聞かず何度も「だるまさんがころんだ!」と叫ぶ場面がある。

これは子供ながらに母親の貞節の乱れを直感的に察しているアキラのストレスから知らず知らずに子供の狂気が滲出ている場面だ。

「強くあらねば」と思いつつも孤独に流されがちな裕子を演ずる松本まりかは、そういった生身の女性をうまく演じている。

——もし識ってる方がいたなら教えてほしいが、裕子が離婚の捺印をしに行くいく喫茶店で待つ元夫邦博(カトウシンスケ) の横に座る女性は文子ではなかったか?慎一のことを相談しているウチにデキてしまったのだろうか?裕子との離婚も結局慎一が原因であったのか———と思っただどうなのだろう。ここで、かなり物語の因果関係が変わるので、思い違いかもしれないが気になっている。