社会のダストダス

ファルコン・レイクの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
4.7
すごくよかった。上映館はかなり少なかったけど、『Aftersun/アフターサン』を観て良かったと思った方は、こちらも見比べてみて欲しい。観る順番が逆だったらもしかしてと思うくらいに、今年観た作品の中でもラストのインパクトと解釈の多様さは随一だったように思う。

アフターサンと進撃の巨人とエッチなお姉さんが大好きな人にはお勧めできる。

もうすぐ14歳になるバスティアンは、家族で夏休みを過ごすためフランスからカナダの湖畔へやってくる。3つ年上の地元の少女クロエに惹かれていくバスティアンは、彼女から聞いた幽霊の出るという湖へ泳ぎに行く。

それなりにまともな感想を書こうと思ったらネタバレ不可避な気がしたので、主に眼福ポイントに注視しようと思います。主演二人がとてもいい、全体的に薄暗くて静かな映画だが、二人とも若いながら見事な顔面強者なので、それだけでも間が持つ。

バスティアンを演じたジョセフ・アンジェルはエンジェルみたいな美少年。クロエを演じたサラ・モンプチは言動も相まって怪しげな魅力を放っている。

バスティアン少年のこちらの共感性羞恥心を疼かせる言動と、それを弄ぶクロエの少年に対して親の恨みでもあるのかというくらいのエロテロリストな所業にサスペンスを感じつつも、ホントかウソか分からない湖畔の幽霊話など意外に子供じみたクロエちゃんの一面にも嬉し恥ずかしと一喜一憂。

浴場であんなことをして欲情しない術などあろうことか。浴場広間が欲情広間に!(言いたいだけ)

新宿のお店だったら何万もとられそうなエロ仕掛けをしてくるクロエの恐るべき奸計に、何度もガタッ!っと席を立ちそうになるも、少年と一緒に悶々と仏門に下ったような気持ちで耐え忍ぶこと静かなる湖畔の如しよ。

劇中で流れる『進撃の巨人』みたいなアニメ。たびたびクロエは死や孤独についての話題を振っており、この湖畔が彼女にとっての世界のすべて、鳥籠のようなものに感じさせる。そこにいる誰もが自分とは本音では向き合ってはくれない。外から来たバスティアンと痛みを共有したと思い、彼に対して勝手な期待をしていた部分もあるのかも。

だから、バスティアンの些細な見栄から生まれたウソに
???「この…裏切りもんがぁぁぁ!!!」 と深く傷ついてしまう。

13歳と16歳のギャップ、93歳と96歳ならまだしも、この時期の3歳差は大人になってからの10歳差以上の精神的な年の差を感じるもの、まるでウォールマリアの如くクロエはバスティアンにとって高く遠い存在になった。ラストは見たままに取ることも出来るし、クロエの幽霊話のようにスピリチュアルな想像としても解釈できる。どんな結末だとしても将来これを思い出として語るのはクロエのほうになるか。