ぶみ

ファルコン・レイクのぶみのレビュー・感想・評価

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
4.0
この気持ちも、この瞬間も、いつか忘れてしまうから。

バスティアン・ヴィヴェスが上梓した『年上のひと』を、シャルロット・ル・ボン監督、脚本、ジョゼフ・アンジェル、サラ・モンプチ主演により映像化したフランス、カナダ製作の青春ドラマ。
フランスからカナダ・ケベックにある湖畔の避暑地に家族でやってきた少年と、母親の友人の娘である高校生とのひと夏を描く。
主人公でもうすぐ14歳になる少年・バスティアンをアンジェル、16歳の高校生・クロエをモンプチが演じており、物語はバスティアンと、母の友人の娘・クロエが久々に再開し、湖畔の町でひと夏を過ごす姿が描かれるのだが、まず印象的なのは、16mmフィルムで撮影したとされるざらついた質感の画質とスタンダードサイズとなる画角であり、これだけで湖畔の避暑地という舞台に漂うそこはかとないノスタルジー感がアップしており、本作品の設定にピッタリ。
そもそもが、避暑地での束の間の物語であることから、最初から別れの時が来ることがわかっているため、そこに向かって、どのように二人の心が接近していくのかが見ものなのだが、十代半ばの三歳差で、ましてや女性の方が年上なので、少年・バスティアンから見ると、眩しさでしかなく、では、少女・クロエからしても、大人への階段を登る途中であり、女性と少女の二面性を持ち合わせている年代を、アンジェルとモンプチが見事な演技で表現してくれている。
そこに、人里離れた避暑地という開放感と閉塞感が同居している世界観、湖に現れるとされる幽霊や事故死という死を感じさせるエピソードが絡んでくるのも、青春時代の刹那な心情を倍増させており、非常に効果的。
また、1967年に実際にカナダのマニトバ州にあるファルコン湖でUFO目撃事件があったというのも興味深いところ。
そして、辿り着いた結末は含みを持たせたものとなっており、これがまた深い余韻をもたらしてくれ、エンドロール中、何がどうなったのか、ゆっくりと振り返った次第。
死を感じさせるホラー的なキーワードを散りばめながら、大人への階段を登る過程で生じる美しさや悲しみが、二人の演技を中心とした懐の深い脚本と映像で見事に描写されており、ほとんど泳げない私にとっては、バスティアンの気持ちが手に取るようにわかる反面、洒落にならない良作。

幽霊なんて信じない。
ぶみ

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