Keigo

野いちごのKeigoのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
3.8
一方的に師と仰いでいるカランさん ( @Laban )からいただいた新たな課題のDVDが、TSUTAYAから届いた。記念すべき初イングマール・ベルイマンは苦しい滑り出し。

自意識に引っ張られてはいけない。
嘘をついてはダメだ。分かったフリをしても意味が無い。分からなかったなら、なぜ分からなかったのかを考えなければ…
映画として優れているかどうかと好きかどうかは別だという納得の仕方では、それ以上先が無い。逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…

冒頭早速のシーン。夢の禍々しさがよく表現されている。白飛びしそうなコントラストの強い映像、針のない時計、御者のいない馬車、顔のないゴースト…イメージの断片である映像が、老人に巣くう不安や恐怖と死の予感を雄弁に語っている。

勝手なイメージで難解なのではと身構えていたが、内容が理解出来ていない訳ではないはずだ。老い極まる人間の追憶、夢に現れる潜在意識、決して拭えない後悔、人間を形作るものと最期まで残るもの、この期に及んで気付くこと、一生が凝縮されたような一日。

分からないのはなぜ自分はそこまで面白がれなかったのかということ。良質な素材から取られた良質な出汁であることは分かっても、直感的に美味しいと感じられないこの虚しさ。美味しいと言ってしまいたくなる卑しさ。自分がイーサクに比べればまだ若いというのは理由にならない気がしているのは、共感出来る部分も多分にあったからだ。

…不本意ながら現時点では、イングマール・ベルイマンの洗礼を受けたとしか言えないのかもしれない。要再見。
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