あ

野いちごのあのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
3.5
夢と分かって見る夢はあまり面白くないと感じました。モノローグよりも自然に夢に入っていく方法はなかったのかと疑問に思いました。

冒頭の夢は、引っかかった馬車、膨らんで弾けた顔、とれた車輪といったように、心の奥に何かつっかかったものがある深層心理を意味深に描いていて印象的でした。しかし、その後は単なる青年期の回想の小出しに過ぎず、「ファニーとアレクサンデル」と比べると、虚構の描写が弱すぎるように感じました。

思想の対立で罵り合う若者たちの若々しさも、いかにもといった紋切り型の描き方でしたし、本作はベルイマンがまだ若い頃に描かれたのにも関わらず、イーサクが年をとって初めて死を感じるようになった、ある意味死に対して未熟な人物に映ったので、あまり入り込めませんでした。

そもそも「名医」といった枕詞がついていないと箔がつかない記憶に思えたので、残念でした。

なんかコソコソと小出しにする意味深な表現は、フェリーニやホドロフスキーみたいに全部開示してしまうおじさんに比べると、まだ安全なところしか見せていない感じがして、随分とつまらなく思います。タルコフスキーなんかもそうですが。
あ