タカシサトウ

野いちごのタカシサトウのネタバレレビュー・内容・結末

野いちご(1957年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

[死ぬ前にようやく自分を振り返る]

 何度かになるけれども、なかなか素晴らしかった。

 主人公のイサク(ヴィクトル・シューストレム)の最初に見る夢が、自分の死体だったり、針の無い時計だったりするので、自分の“死”がテーマになっている。

 しかも、イサクは、医学博士として、表彰されるのに、家庭では皆に疎まれ、息子は死にたがっているし、息子の嫁からは、エゴイストと言われる。

 そういう自分に気づいて行くからこそ、自分の唯一の拠り所であろう、幼い頃の家庭の思い出や、恋人のサーラ(ビビ・アンデショーン)のことや、彼女を弟に奪われた傷にも触れていくことが出来たのだろう。

 幼い頃の家族の思い出は、「ファニーとアレクサンデル」を彷彿とさせられほっとする。主役のヴィクトル・シューストレムはいいとして、脇を固めるイングリッド・チューリンもビビ・アンデショーンもさすがに上手い。

 そして、この偏屈な78歳の老人が、死を意識した所で、ようやく自分の近しい人たちに目を向けていくようになった所で映画は終わる。医学の貢献とは全く別に、自分の死を意識したからこそ、大切なものが分かったのだろう。(2018.8.28)

 若くして撮ったイングマール・ベルイマンは、長く父との確執があり、それを止められなかった母ともしっくりいかず。そして、離婚と再婚を繰り返し、安定した家族関係を長く持つことが無かったけれども、自分の理想として、少なくとも死ぬ前には、身近な人と安らぐ世界を作ることだ、と考えてここに到達したのだろうと思う(2020.11.21)。