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野いちごのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
4.0
名誉賞受賞を控えた70過ぎの老医師が死を意識したで人生を回顧する

ベルイマン初期の傑作

私にとって初めてのベルイマン作品でしたが、いま鑑賞しても全く古さを感じない作りで、無駄の一切が省かれている、その洗練された手法に驚く

・作品における時間の重要性
・3つの夢
この作品は夢がトリガーになって物語が進む
ひとつめは受賞前夜
ふたつめは生家でみる白昼夢
みっつめは

いままでの人生の否定
顕微鏡はみえず、医師としての第一条件を答えることもできない
そしてその条件は、“赦すこと”

・改竄される過去
上述した夢に出てくる過去シークエンスは記憶ではない
弟と許婚のサーラがキスするシーンをイサークは知らない
あれは弟と許婚が結婚したことで知る、イサークの想像だ
この作品はナレーションが入る通り、イサークの一人称によって進行する
すべては彼の視点の中で描かれる

・野いちごの意味するもの
タイトルの野いちごが登場するのは、弟と許婚のキスシーンだ
それはイサークに対する裏切りであり、不実を意味する
ここで想起されるのは、アダムとイブが食べた林檎だ
キリスト教で意味するところの原罪
林檎は知恵だ

そして押し倒された許婚の服は野いちごの染みがつく
不実による穢れだ
そしてその染みすら、イサークは目にしていない
象徴的に罪を物語るが、それは同時に林檎のような知恵であるとも言える
真面目なイサークにはついぞ感じることのなかった恋心や情熱を“知る”ということ

・ベルイマン作品における記憶というものと回顧というアクション
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