みりお

レジェンド&バタフライのみりおのレビュー・感想・評価

レジェンド&バタフライ(2023年製作の映画)
3.9
素晴らしくエモーショナル、かつ新たな切り口でアプローチされた信長像に魅了され、エンドロールで涙が止まらなくなるくらい心打たれてしまいました。

これは、戦国の世を駆け抜けた武将・織田信長の話ではなく、信長と濃姫という夫婦<めおと>の話。
天下統一という偉業を(ほぼ)成し遂げた男は、名声や富など多くのものを得たのだろう。
だがその一方で多くのものを失い、夢半ばで彼は倒れた。
その最期の瞬間に欲したものはなんだったのか。
今までにない側面から、それが丁寧に描かれていることが、とても心に響いた。

大義のために生きることは素晴らしい。
到底成し得なさそうな夢を見ること、そしてその夢を持ち続けることは、誰にでもできることではない。
でも自分の身体は一つ、そして流れた時は戻らない。
歴史に残る偉業を成し遂げても、自らの心が満足する人生であったのかはわからない。
きっと最期のときに思い出した人は、誰よりも幸せにしたかった人で、でも最期に気付いてもそれはもう叶わないのだ。
走馬灯のように、生きたかった人生を走り抜ける信長と濃姫の笑顔があまりに幸せそうで…

なんのために生きるのか、何が本当に大切なものなのかは、日々仕事に精一杯だと忘れがちになってしまう。
けれど最も辛いときに、己の肩にそっと寄り添うように止まる蝶に気付けるように、その蝶を振り払うことのないように生きていきたいな。
自分の人生の最期には、生きたかったもう一つの人生ではなく、愛する人と過ごした幸せな人生を思い出したい。

いろんな作品で英雄視される信長がすごく苦手で、この作品も楽しみにしつつも、「キムタク✖️信長か…濃いめの味付けになりそうだな」と観に行ったのですが、自信に満ち溢れながらも常に何かを物欲しそうに見つめる信長は、キムタク以外にはできなかったと思います✨
そして綾瀬はるかの濃姫は本当に素晴らしい✨
序盤の鼻につく演技もさることながら、後半その姿勢は崩さないまま、それでもいつの間にか信長に激しく恋していたことを示す変化は、目を見張るものがありました👀
英雄視されることもあれば、魔王と謳われることもあり、そして何より何度も描かれてきた織田信長という男を改めて映像化するんだから、賛否が分かれるのは必至。
いろんな感想が既に飛び交っているけれど、このアプローチの仕方は、特に女性の心には響くんじゃないかな✨


【ストーリー】

尾張国の織田信長(木村拓哉)は大うつけと呼ばれるほどの変わり者。
敵対する美濃国の斎藤道三の娘・濃姫(綾瀬はるか)と政略結婚という形で出会った信長は、彼女と激しくぶつかるが、今川義元との戦で一緒に戦術を練ったことから二人は固い絆で結ばれるようになる。
そこから二人は、天下統一に向かって歩みだす。
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