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レジェンド&バタフライのcinemageekのレビュー・感想・評価

レジェンド&バタフライ(2023年製作の映画)
4.0
レジェンド&バタフライ


監督/大友 啓史
 龍馬伝(10)
 ハゲタカ(09)
 るろうに剣心(12)
 るろうに剣心 京都大火編(14)
 るろうに剣心 伝説の最期編(14)
 るろうに剣心 最終章 The Final(21)
 るろうに剣心 最終章 The Beginning(21)


脚本/古沢 良太
 キサラギ(07)
 探偵はBARにいる(11)
 コンフィデンスマンJPシリーズ


出演
木村拓哉
綾瀬はるか
伊藤英明

宮沢 氷魚(みやざわ ひお)

中谷美紀

市川染五郎

音尾琢真



東映70周年記念作として大きな話題としてテレビ番組でも取り上げられている今作

監督が「るろうに剣心」の大友啓史(おおともけいし)
脚本が「コンフィデンスマンシリーズ」の古沢良太(こさわりょうた)

さらに主演が
木村拓哉となると話題にならないわけがない


オープニングは織田信長と濃姫の結婚から幕が上がる。

互いに政略結婚であることは十分理解しており、互いに抜き身の刀のようにピリピリとしている。
初夜もバタバタの乱闘騒ぎになるほど

時は流れ、信長の父・信秀の葬儀があり、そして濃姫の父、斎藤道三が倒される。そして最大の危機、今川義元の軍勢が尾張に攻め込まんとしている中、濃姫との会話の中で信長は起死回生の案を思いつく

見事 桶狭間の戦いで勝利した信長。凱旋する彼を濃姫は見守るように迎える。


とまあ
歴史好き。特に織田信長の有名なエピソードをほぼほぼ随所に入れ込んでいる物語ではあるが、この映画の最大の特徴は合戦シーンが極端に少ないこと

その分、織田信長と濃姫の2人のエピソードに割かれている。

そもそも織田信長の物語は、演義的なエピソードもあれば、信長公記で知られるエピソードまで多くあり、さまざまな信長物語で描かれている。


この映画でも「弥助」のエピソードを匂わせるだけ匂わせておいてほぼ描かないところなど、ガチンコの歴史好きからすれば、消化不良になるかもしれない

そもそも大河ドラマのような長期のドラマを2時間40分ほどにまとめるといったところに無理があったのかもしれない。


そもそも濃姫の存在そのものがミステリーの中のミステリー的な事もあって、この映画ほど、濃姫にスポットを当てた作品はないだろう
それ故に、かなり自由に描ききっているからこそ、面白さがあることは間違いない


さて 主演の木村拓哉だが、自分の場合、テレビドラマの木村拓哉は全くと行っていいほど知らない
映画の木村拓哉といえば 
 武士の一分(06)
 HERO(07、15)
 スペースバトルシップヤマト(10)
 検察側の罪人(18)
 マスカレード・ホテル(19)
 マスカレード・ナイト(21)

を観たくらいか?

武士の一分を観るまでは、ものまねをされる木村拓哉しか知らなかったので、山田洋次の見事な監督力で、彼の演技力が磨かれたのではないかと思う。

その後の
HEROや
検察側の罪人
での落ち着いた役どころではしっかりとした演技をしてくれていた。

よく、「木村拓哉はキムタクを演じている」と言われるが、それはそういったイメージのベクトルが働いている部分もあると思う。自分がみてきた映画を見る限りでは、木村拓哉の演技はそんなに比喩するほどではないと感じるし、今回の作品の木村拓哉はかなり落ち着いて演技をしており、大作映画に向けてかなりのプレッシャーがあったにも関わらず、演じきったと思う

唯一気になるとすれば、怒気の演技くらいか?
声質をもうちょっと変化あればもっといい役者になるだろうなぁ…


過去に織田信長を演じた役者が多すぎるゆえに、演じるプレッシャーも大変さも会っただろうに…そこは、木村拓哉の織田信長として十分に見せてくれたと思う


一方の綾瀬はるかは、素晴らしい演技を見せてくれた
アクションというか演舞的殺陣も見せてくれる

濃姫という謎に満ちた女性を演じるにわたって、濃姫=綾瀬はるか といってもいいくらいのインパクトを与えてくれている。
ちなみに、一応、明智光秀とはいとこ…らしいのだが、そういったことはこの映画には全く描かれていない

綾瀬はるかの出演シーンはどれも印象的
思わず体が動いてしまったゆえに危機に陥るシーンからの展開をもうちょっと丁寧に描いてくれていれば、後半への伏線にもなっていたのかもしれない

ただ、綾瀬はるかはかなりの熱演なので必見


この映画で独特な雰囲気だったのは、
明智光秀役の宮沢氷魚くん

本能寺の変の実行者で、信長に恨みを持っていた説が一般的だが、この映画では新たな一面を見せてくれるのはおもしろいところ

また演技も素晴らしく、尊敬と畏怖と信奉者的な部分からの手のひら返しの演技はよくできていた
逆にもっと事前から目立ったエピソードをシナリオに盛り込んで登場シーンを増やしても良かったかもしれない

木下藤吉郎役の音尾琢真も良かった
あのお調子者でありながらも影で何をしでかしているかわからない、
ちょっとクセのある藤吉郎は見事

いずれにしても、どの配役の役者も素晴らしいので見ごたえは十分

さらに今までは撮影ができなかったであろう場所での撮影が行われており、
ロケだからこそのリアル感を感じられる
あれは歴史を重ねた建物だからこそ感じられる重厚感をレンズで拾い上げたカメラマンの腕前は流石と言える

それらのロケに負けないように作り込まれているセットも注目



しかし、
ツンデレ夫婦の物語をここまで拡大させる脚本力は大したもの
歴史モノ=正史 とのギャップを気にしすぎて、中途半端になりがちなところを
正史エピソードに濃姫を組み込むうまさは面白い

それ故に ラストはファンタジー感のまま終わらせるくらいの冒険をしても良かったかもしれないが、やはり70周年記念作
正史と同じベクトルでまとめている。


織田信長はこうあるべき!
時代考証的にはこうあるべき!
といった、教科書の歴史準拠が好きな人は違和感があるかもしれない
そういう意味では、多くの歴史書に 結婚時のエピソードくらいしか残されていない濃姫を準主人公に据え置いてこの映画では、歴史的視点、時代的考証などは取っ払ってみたほうが面白いと思う


東映70周年の記念作品として、大作の中の大作映画ではある
名作とまではいかないが、大作でありエイターテインメント映画であり、
大きなスクリーンだからこその映像も多数ある作品と言える


ただ 時期的なエピソードが
天文17年(1548年)とか永禄3年(1560年)
と字幕が出るので、簡単に織田信長の歴史を知っておくとより面白く楽しめるかもしれない

以下 代表的なエピソード

天文13年(1544年) 織田信秀(信長の父)は斎藤道三に攻め入るが大敗(加納口の戦い)
天文18年(1549年) 織田信長 濃姫と政略結婚(今作のオープニング)

弘治2年(1556年) 斎藤道三(濃姫の父)敗死
永禄3年(1560年) 桶狭間の戦い(今作でエピソードあり)
元亀元年(1570年) 金ヶ崎の戦い(今作でエピソードあり)
元亀2年(1571年) 比叡山焼き討ち(今作でエピソードあり)
天正3年(1575年) 長篠の戦い(今作でもちらりと映る)
天正10年(1582年) 本能寺の変
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