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レジェンド&バタフライのkuuのレビュー・感想・評価

レジェンド&バタフライ(2023年製作の映画)
3.5
『レジェンド・アンド・バタフライ』
映倫区分 PG12
製作年 2023年。上映時間 168分。
木村拓哉と綾瀬はるかの共演で織田信長と正室・濃姫の知られざる物語を描く、東映70周年を記念して製作された歴史大作。
大友啓史が監督を務め、古沢良太が脚本を手がけた。

格好ばかりで『大うつけ』と呼ばれる尾張の織田信長は、敵対する隣国・美濃の濃姫と政略結婚する。
信長は嫁いで来た濃姫を尊大な態度で迎え、勝ち気な濃姫も臆さぬ物言いで信長に対抗。
最悪な出会いを果たした2人は、互いを出し抜いて寝首をかこうと一触即発状態にあった。
そんなある日、尾張に今川義元の大軍が攻め込んでくる。
圧倒的な戦力差に絶望しそうになる信長だったが、濃姫の言葉に励まされ、2人は共に戦術を練って奇跡的な勝利を収める。
いつしか強い絆で結ばれるようになった信長と濃姫は、天下統一へと向かって共に歩み出す。

歴史てのはもはや物語。
なんて言葉を書くと叱られるかもしれない。
しかし、一般的に考えられる物語ちゅう言葉は、フィクションと同じような意味で捉えられてる。
確かに、歴史小説は想像力、イメージの創造に基づくものである。
多くの人が "歴史 "というものに我慢がならないのは理解できる。
本屋さんで『真の歴史』みたいなタイトルで、事実とは異なる想像に基づく本が並んでいるのを見ると(数ページ読んで矛盾が見えたら)、歴史家でもないズブの素人ながら腹立たしく思うときがある。
歴史教科書の中には、『歴史記述は客観的な事実を追求するものではなく、国家のため、国民統合のために行うものである』なんて考え方を持つ人たちが編纂したものもある。
現在の歴史学やと、事実が重視されてるが、事実ってのは、文書による証拠に基づくものとされている。
単一の資料に基づいているのではなく、複数の資料を考慮して『事実』が記述される。
資料のないものは黙殺されなければならない。
資料的根拠があれば、きちんと主張された歴史論文はフィクションではない(ないとされてる)。
しかし、きちんとした資料のある歴史も、多くの場合、物語やと云っても過言ちゃう。
複数の出来事をつなぎ合わせて叙述するだけで、すでに物語になっている。
事実か虚構かの問題ではないので、事実を述べると称する歴史論は、客観的に観察可能な出来事の叙述のみからなるものではない。
まぁ、なんか難しい事から書き始めたけど、そないな所を問題にせずに単なる物語としてみたなら、悪くない作品やったかな。
ただ、歴史上の超定番キャラの多くは既にやり尽くした感もある。
今作品の信長をはじめ、家康、秀吉等々。
それらを史実に沿って描くと、どないしても今更感が強くなる。
それで、新機軸とか新解釈をぶち込んでくることになるわけやけど、その新解釈自体も、もはや見慣れてきた。
それに、その新解釈として今作品を鑑賞したなら決して成功しているとは云い難いと感じる。
ただ、出演者の演技は、素晴らしいの一言に尽きると個人的には思う。
主演の木村拓哉(織田信長)、ヒロイン役(濃姫)の綾瀬はるかの圧倒的な存在感は云うまでもなく。
チョイ木村くん贔屓の目はあるが。
特殊メイクの力を借りることで、本人と気付かないほどの変身ぶりを披露する徳川家康役の斎藤工とか、邦画においてはまぁ、トップクラスの役者たちが、持てる力を存分に発揮し、作品の強度を高めることに貢献していた。
物語の構成はザックリと書くなら、前半はコメディータッチパート、後半はシリアスタッチパートとなっている。
前半のパートには、個人的には幾度となくツッコミ入れつつ、こないな軽いノリやし賛否を二分したんかな。
まぁ、肩肘張らずに楽しめるって点では悪くないかな。
しかし、スマスマでの木村拓哉パートのコントを観ているような錯覚すら感じた。
脚本には、木村拓哉も綾瀬はるかも『お笑い芸人風の動きで』みたいな指示がなされてたんかな。
そんなこんなで、結構、マジにシリアスな芝居しきってる俳優さんたちも笑いをこらえながら演じていたんちゃうか?なんて想像してしまい、はからずも微笑ましい気持ちにはなった。
暴走する脚本と想像力に流されながら、少なくとも楽しく鑑賞はさせていただいた。
んで、後半パートやけど、あくまで個人的にですが、本能寺の変以外のシーンは、基本、コメディータッチでも有りやったんちゃうかな?
その方が、シリアスにならざるをえない、史実である本能寺の変の描写も緊迫感が増すんちゃうかと思うし、最終的により泣けんのちゃうかと。
しかし、まぁ織田拓哉やししゃーないとは思うがなんであないに強いん?
そんな有り得ん所があったり、反面、戦国時代とはきっとこないな風景やったんやろなぁなんて思える映像美と、エキストラを含めた登場人物の豊かな動き、その細部までのこだわりぶりにはマジに舌を巻いた。
でも、こないに長い作品にする必要性あるんかな?
ちょいダレてもうたのは否めない。
織田拓哉と濃姫はるかの30年にも渡る絆を描きたいから長尺になったんやろか。
いつになったら、クライマックス本能寺の変に行くねんっっつ!
なんて連呼するほど引っ張られた。
んで、織田拓哉強すぎやし笑。
でも、信長の年を重ねていく様子がメイク技術も相まって、どえれぇ凄みを感じたみゃ。
木村拓哉の心意気も見えた。
方や、濃姫はるかは、変化なくずっと若々しい。
こないな対比描写は、当然賛否が分かれるやろけど、個人的にはアリかな。
んてもって、クライマックスに導入される、もし⚪⚪が⚪⚪しとったらってシーン。
がとても美しかったし、これは現実なんかな?なんてロマンチックに思わせる迫真性があったかな。
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