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金の国 水の国のumisodachiのレビュー・感想・評価

金の国 水の国(2023年製作の映画)
3.8



商業的に大成功しているが水資源がない金の国と、貧しいが水を豊富に有する水の国。はるか昔から戦争を繰り返してきた2つの隣国は、数百年前の約束に従って婿・嫁として男女を贈り合うことに。しかし、実際に送られたのは犬と猫。この明らかな侮辱行為が明るみになれば確実に戦争が起きると危惧した(婿・嫁)の受け取り手だった王女サーラと建築士ナランバヤルは、それぞれ事実を伏せることにする。ある日、2人は偶然に出会って……。

息子と観に行ったのだが、思った以上に政治の話でちょっと対象年齢が高かったかも。小6あたりの社会の授業で見せればいいんじゃないかと思うほどに真っ当な政治物語で、心が洗われた。

どう転んでも水資源がある方が強くない?とは思うものの、経済的に発展しているからこそ人が流入してきて資源の枯渇が未来に迫っている金の国の造形は巧み。リヤ王を下敷きにしていると思われる王と王女たちの配置もわかりやすく、それを政治的な対立として描いているのが面白い。片方は占い師を、片方はスターを客寄せパンダ的に担ぎ出し、民衆を扇動しようとしているのもリアルだ。

文化的な描き方も良かった。中東をイメージしているのかな?服装とか食事の丁寧な描き込みに興味を引き立てられたし、動く箱といったアイテムも上手く機能していた。水の国の描き方がちょっと物足りなかったのが残念。

国交回復のためにガンガン動き出すナランバヤルに対して、ちょっとした誤解で悩むサーラというのが非対称でちょっと気にはなったのだが(そもそも、「一番美しい女」と「一番賢い男」ってのがな……)、ナランバヤルの動きは非常に面白い。あまりにもサクサク進みすぎだとは思うものの、それは1本の映画にまとめる以上仕方がない部分だろう。キャラクターもそれぞれ魅力的だったし、総じて満足度の高い作品。


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