たく

バーバリアンのたくのレビュー・感想・評価

バーバリアン(2022年製作の映画)
3.6
民泊を借りに来た女性が異常な出来事に巻き込まれていく不条理ホラーで、全く予想のつかない展開や、中盤で舞台が切り替わる構成などなかなか新鮮だった。最後に明かされる事態の真相が全然頭に入ってこなくて、モヤモヤしたまま終わった感じ。テス役のジョージナ・キャンベルの不安と強い意思がせめぎ合う演技が魅力的で、ビル・スカルスガルドは筋書きを読みにくくさせる重要な役回りだったね。

仕事の面接を受けるためにデトロイトの民泊を予約してやってきたテスが、手違いにより予約がバッティングした先客のキースと出くわす。このキースが一見まともな人のように見えて、実は何か隠してるようにも見えるというビル・スカルスガルドのキャスティングが絶妙だった。夜が明けてみれば民泊の周囲の街並みが荒廃しており、何やらただならぬ雰囲気が漂う。テスが警戒心の強い女性で、部屋の鍵をかける手元を何度も写すのが「すずめの戸締り」を思わせる。最初はキースを警戒してたテスがキースとの意外な共通項を見つけ、少しずつ警戒心を解いていくのがちょっとハラハラした。

中盤の衝撃的な展開から全く別の街並みに場面が移り、新たな人物が登場してきて戸惑う。彼が民泊の所有者で、発見した地下スペースを売却物件の面積に加算できるということでウキウキで計測するのが、その直前に同じ場所で起こった凄惨なシーンとの対比になってて上手い演出。ここから彼も地下の住人に捕まるわけだけど、どうやらこの怪物らしき生き物は育児ビデオを見ながら母親の真似事をしてて、これがグロテスクな真相に繋がっていくのが予想もつかない展開。なんとか脱出したテスが警察に訴えても取り合ってくれないのがちょっと不自然で、警察は知ってて放置してるのかもと思った。

場面が唐突にレーガン政権時代に遡り、そこでは街並みがまだ綺麗で住民たちがいかにも平和な暮らしをしてて、住居の水道チェックをしてる配管工らしき男が不気味。このシーンが最後まで一切説明されないけど、おそらくこの男が街を荒廃させた元凶で、最後に明かされる事態の真相はちょっと「ドント・ブリーズ」の変態ジジイを思わせた。でもこれはあまりに荒唐無稽で、すんなり入ってこなかったね。ラストで、モンスターとして生み出された存在が本能的に見せる自己犠牲が哀しく、ここは「男の薄情、女の愛情」の典型的な図式だった。
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