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ブロンドのおのレビュー・感想・評価

ブロンド(2022年製作の映画)
3.6
(性的描写や過激なミソジニー、事実とは異なる描写。←これは監督の妄想であると考えている人、騙されたと思って以下の視点から考察してみるのはいかがでしょうか?)

■ミソジニーなメイルゲイズによる搾取の時代で。

本作はジョイス・キャロル・オーツのノンフィクション小説「Blonde」を軸足とし、映像作品としてかなりのクオリティーで再現されている。いくつかの評価の中で、これは監督による無意味な性的描写であり、冒涜であるという意見が見受けられるが、この事実とフィクションの狭間にある問題はオーツのフィクション作品を表現していると言っていいだろう。

例えば、エドワード・G・ロビンソンとチャールズ・チャップリンの両方に俳優であり、それぞれ40歳と42歳で亡くなった息子がいたことは事実だが、残りの関係は ブロンド、マリリンが両方の男性と社交的にも性的にも楽しく戯れているのが同時に見られるのは、ジョイス・キャロル・オーツのフィクション。つまり単なる監督の妄想と一瞥することはできない。

ではこの不必要な性的描写とフィクションの追求はなぜ行われたのか。その答えは、オーツ作品の中にある、ミソジニーなメイルゲイズによる搾取の時代の中で母性を求め続けるマリリン・モンローのプロットを描き切るためと考える。これはノーマジーンという内面を描き出すことによって描くことのできる時代の肖像画なのだ。あの時代のさまざまな煌めきと問題をインテリジェンスに描いている。

終盤にかけて演出や編集に関して力尽きてる感は感じたが、オーツの作品の不思議な読後感はきっとこんな感じなんだろうなと。共同幻想の廃墟や過去のレガシー化した煌めきを巡る物語は累々とあるが(それが面白いかと言う議論は別として)今回はマリリンモンロー、そしてノーマジーンというノンフィクションな人物を通してその世界を巡礼していったと言う点では、それだけでも映画体験として与えてくれた価値は大きいのではないだろうか?
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