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ブロンドのdalichokoのネタバレレビュー・内容・結末

ブロンド(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

映画はモンローを描くものではなく、モンローが置かれていた当時の社会を「虐待」という視点から描く新しい映画だ。ここではモンローを軸に女性蔑視や虐待を描いているが、広い意味では例えばダイアナ元妃が追い詰められてゆくまでの過程と極めて類似性がある。自らの出自を断って、別の社会に飲み込まれてゆくことで生じる狂気について、この映画は冒頭のシーンで象徴的に描いている。母親が存在しない父親の写真を見せるとき、その写真の壁には亀裂が入っている。この映画の描く主題はこれだ。すなわち「分断」。ここでマリリンの望むこととは別の社会が存在し、彼女自身の内面がどんどん分断されてゆくことが描かれる。

もうひとつ。

この見たこともないような素晴らしいカメラワークに圧倒される。これはすごい。ありとあらゆるシーンで、驚くような演出が施され、縦横無尽に動くカメラは、遂にはマリリンの胎内にまでメスを入れる。鳴り響く電話を何度も少しずつ違う角度から捉える映像や、大勢のエキストラを使って俯瞰から映画館を見下ろすカットなど、想像を絶するシーンの連続も見ものだ。しかもアナ・デ・アルマスの美しくも体当たり的な演技は胸に迫る。
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