茶碗むしと世界地図

VESPER/ヴェスパーの茶碗むしと世界地図のレビュー・感想・評価

VESPER/ヴェスパー(2022年製作の映画)
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 2022年製作のSFファンタジーである。

 ヨーロッパ発のインディペンデント映画でこのくらいのスケール感を出しているのはすごいし、ガジェットまわりがクローネンバーグっぽくて妙な気持ち悪さがある。主人公ヴェスパー(ラフィエラ・チャップマン)の人物造形も『風の谷のナウシカ』のナウシカみたいで日本人受けしそうだなーと思った。しかしながら、全体的につまらないというわけではないのだが、とくに面白いというわけでもない地味な映画という感じだ。

 お話自体は「ディストピア救世主」ものであり(このへんも『風の谷のナウシカ』をそのまんまやっている)、よく知っている構造なのでそうなるとビジュアルをもっと斬新にすべきなのだが、どこかで見たような表現になっていて話もビジュアルもちょっと中途半端な気がする。あと全体的に『ザ・クリエイター/創造者』とかぶって気の毒だ(ただしこれに関してはDVDスルーのパクリ映画によくある「間違って借りる層」みたいなものを期待したのかもしれない)。
 定番のボーイ・ミーツ・ガールではなくガール・ミーツ・ガールというところはおっと思ったし、ヴェスパーとカメリア(ロージー・マキュアン)の間柄もクィアな感じがしてここの展開は面白そうだと思ったのだが、あっけなく終わってしまったのは残念だ。まあヨーロッパ映画的なエモーショナルと考えればいいのだが……。

 見所のひとつはヨナス役のエディ・マーサンの演技である。こずるい役どころの多いエディのイヤな演技力をしっかり引き出しており、こんな映画だが悪役としてはけっこう深みがあった。一点どうでもいいことだが、エディの目はブラッドリー・クーパーに似てる気がする。