むぎちゃ

灼熱の魂 デジタル・リマスター版のむぎちゃのレビュー・感想・評価

4.0
じっとカメラを睨みつける少年の長いカット、その瞳に恐ろしくなりながらも物語に引き込まれた。

原題はincendies。ググッたところ「感情の爆発、動乱、戦乱」の意だそうな。
文字通り戦乱に巻き込まれ動乱の世を生き感情の爆発をもたらした人の映画である。


遺された人達による亡くなった親の出自や半生を辿る旅…
このフォーマット自体は在り来りなものだが、託された遺言の不可解さやそれらが帰結するラストまで何ともまぁ奇妙で奇天烈なサスペンス展開だった事か。

人から人へヒントが繋がれていくのはRPGゲームのような非日常感があり、さらには各章のタイトルも相まってある意味落ち着くようなフィクショナルさ。

現在と過去が入り乱れる作りだが、それによってイチイチに答え合わせや説明描写を自然に入れ込んでるのも上手だし見易くしてくれてる要因の一つ。

途中までは「ボンヤリさせるとこはボンヤリさせて消化不良で終わったりするのかなぁ…」と不安だったが、(たとえそれらがご都合主義展開だったとしても)ちゃんと全部片付けてくれたのは個人的には嬉しい作り。

ラストカット、墓前に立つ『手紙の受取人』。
遠目のショットからは彼の表情はハッキリとは伺えず、そこに現れるタイトル「incendies」…。
何とゆっくりと目を閉じたくなる素晴らしい余韻だろうか!

個人的には上にも少し書いた、少し出来すぎなご都合主義展開が逆に現実とフィクションの明確な線引きになってくれたお陰で、この素敵な余韻に浸れたのだと思う。
あと現地のサポート役の人有能すぎますよ。


最後に、劇中に出てきた地名で思い出した作品『テルアビブ・オン・ファイア』との温度差がエグい。
こっちはこっちでオススメですが。
むぎちゃ

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